小説家と毒の果実

フォージャー男爵の屋敷の中庭は、王宮と比べると小さい。しかし手入れは行き届いている。オリバーとセバスチャンが中庭に置かれた椅子に座っていると、レミーがやって来た。その手にはティーポットやカップがある。

「お待たせしました」

「使用人が運ばないんですね」

セバスチャンが少し驚いた様子で言う。レミーは、苦笑しながらテーブルの上に置きながら答えた。

「この辺りは田舎ですから、それほど使用人を雇っていないんです。みんな畑仕事の方が忙しいですからね。母も使用人と一緒にキッチンに立っているんですよ」

レミーはカップに紅茶を注いでいく。それを見ながらオリバーは口を開いた。

「確か、国王陛下と王妃にはグレープフルーツジュースを勧めたんですよね」

「ええ。グレープフルーツはこの地域の特産品ですから。飲んでいただきたかったんです」

「今日はグレープフルーツジュースではないんですね」

「グレープフルーツは酸味と苦味がありますので、好みが分かれるんです。なので紅茶をお出ししました」