小説家と毒の果実

「ここが現場だ」

セバスチャンがオリバーを連れて来たのは王宮の中庭だった。たくさんのテーブルや椅子が置かれており、植えられた花の手入れも行き届いている。

「お前、過去を見る魔法は使えるか?」

セバスチャンがあくびをしながら訊ねる。オリバーは「使えますよ」と答えた後、杖を取り出して目を閉じる。頭の中で魔法を発動するための呪文を唱えた。

(我は真実を知りたい者。時の精霊よ。植物は種に、水たまりの水は空に、大人は赤子に、還したまえ)

オリバーの足元に魔法陣が現れ、光を放つ。光が消えるとオリバーの耳に賑やかな声が聞こえた。目を開ければ、何もなかったテーブルの上にはケーキスタンドや紅茶が置かれ、ドレスやタキシードで着飾った人々が談笑している。

「これは……ティーパーティー」

「そうだ。あの事件が起きた日はティーパーティーが開催されていた。ここにいるのは王族関係者と王族と深い繋がりのある貴族様だ」

オリバーの隣でセバスチャンが頭をボリボリかきながら言う。そして「こっちだ」と言い、王宮の中へと入っていく。