勝ちたい僕と冷たい君

 その日の放課後、さっき教室で
怒っていた彼女と、涼しそうな顔で
彼の隣に座るあの娘が、僕が大好きな彼の
もとにやって来ると、
 「ねぇ~、一緒に帰ろうよ」
 と彼を誘った。
 「え? いいけど。なんだよおまえ等
二人して……」少し驚く彼。
 もちろん、僕も驚いた。
 何故かって?
 だって……さっき教室で
彼女の怒った顔とそれをあざ笑うかの
ようなあの娘の表情ときたら……
いくら鈍感な彼でもわかるよね?

 三角関係……
いや僕をいれると四角関係なんだよ。

 「ねぇ~帰ろうよ」彼女が彼の腕を掴んだ。
 おっ、いつも見せない大胆な行動。
 「私も方向一緒だからいいでしょ?」
 おっとぉ、あの娘も彼の腕を今度は
ぎゅうぅ~と握りしめた。
 おい、おい、旦那さんモテますな……
なんて言ってる場合じゃない。
 おい、コラ、あんたたちそんなに強く
掴むと彼の制服の袖が破けるではないか……。
 なんて僕がやきもきしていると、
 両腕を掴まれた彼が一言、
 「俺、女同士がキーキーするのって
嫌いなんだよな」と呟いた。

 すると、どうでしょう……
 彼女とあの娘は同時にパッと彼の腕から
手を離すと、満面の笑みを浮かべ互いの
顔を見合わせると、
 「そんなことないよね」と彼女。
 「うん……私達、意外と仲いいよね?」
 とあの娘が微笑んだ。

 う……ん、これぞ悪魔の微笑み。

 「じゃあ、帰ろうか」
 「うん、行こう」
 彼女とあの娘は何事もなかったように、
ニコニコしながら互いに腕を組むと
彼の先を歩き出した。
 
 僕はこの時思った……。
 女子のこの変わり身の早さ……。
 なんで互いにニコニコしてられるんだ?
 やっぱり女子って怖い……って。
 
 一部始終を見ていたそんな僕に
彼が気づくと、
 「ほらぁ……おまえも帰るぞ」
 と冷たく呟いた。

 「う、うん……」
 僕はリュックに教科書とノートを
詰め込み急いで彼の隣に駆け寄った。

 あ~、これよこれこれ。
 やっぱり君の隣を歩く瞬間が
僕は一番幸せだな……と思った。