さかなの眼

のぞみと真奈が琵琶湖のほとりに着いた。
空には雲が掛かってまだ過ごしやすい。

「えぇーなんで、波があるの?これ湖だよね」
真奈は湖の際で不思議そうに眺めている。

「山からの風のせいらしいよ」
「へぇぇ。そうなんだぁぁ」と言いながら
打ち寄せる波から慌てて逃げている。

「濡れないでねー」
のぞみは少し離れた湖のほとりに
設置された石のベンチに座り
真奈を笑顔で見守る。
ベンチは心地よい風と反対に
まだ夏の日差しの恩恵を残して温かい。

ーそう言えば、あのバーベキュー場ここの近くだったかな

この場所はのぞみが住んでいた市から少し離れている。
少し先に飯盒炊爨が出来る場所があって
中学2年の校外学習で
班に分かれて昼食を作るのが中学校の伝統だった。
カレーやバーベキューなんかを自分たちで作った。

でも食べれなかったんだよね。

そう言えばそうだったな。
黒い靴の踵をコンコンと地面に打ち付けて
思い出していた。



ーーーー『やったな』


教室の片隅で笑顔の河合君と
グーパンチでタッチしていた。
あの時に私は高鳴る鼓動になす術がなかった。