さかなの眼

河合君は春先だと言うのに
肌は焦茶に焼けていて
毎日の練習量がうかがえる。
大きな口を開けて笑っている姿に
のぞみはぽーっと見入ってしまった。

「わりいわりい。
城咲って面白いんだな。」

河合君は意外にゲラなんだなと思った。

今度は私が先導して美術室に戻った。
河合君はキャンパスを机の上に置いて
美術室を見渡す。

「他の部員は?」
美術室はがらんとして誰もいない。
顧問さえ最近は見かけない。

「後二人いるけど、ほとんど幽霊部員。」
「へー。勿体無いな。
ここからの眺め、すげーいいのに。
城咲の独り占めだな」


河合君が4階の美術室の窓から校庭を眺めて言った。
ここからだいたいの体育系部活は見渡せる。
「うーわ。やっべ。
紅白戦始まってる。俺戻るわ。」

「河合君、ありがとう」
河合君の背中に向けて言った。
パタパタと河合君の足跡が
遠ざかる音だけが聞こえた。

キャンパスに着いた土を見ながら
さっきのことを思い出して
また顔が暑くなった。