さかなの眼

のぞみは思い出すように言った。
「うーん。2年生になってから仲良くなってね。
いっぱい話してカラオケとか一緒に行ったなぁ。」

のぞみの思い出す顔に笑顔が浮かんで
真奈の顔も綻んだ。
「えー青春じゃん。いいねー。
あっ。彼氏とかは滋賀に居なかったの?」
ニヤニヤしながら真奈は聞く。

「あー…。ふっふっふっふ」
何か思い出したようにのぞみが含み笑いをした。
「いたんだ!何何何??
もしかしてママは知らない人?」
真奈はのぞみの側に寄ると
テンション高めに目を光らせた。

「康子は知らないかも」
「もしかして、初彼?」
のぞみが「ふふふ」と笑うと
「えーえーえー!!マジーでー!
もしかして今回初彼に会いにいったりする??」
「そんなわけないでしょ。
もう相手にも家庭があるでしょ。」
「えー。つまんない。何だー」
真奈は下唇を前に出してぶーたれて見せた。

「いい思い出として残しておくの」
「へーいい思い出なんだ〜」
と両手を頬に当ててのぞみを茶化すように
ニヤニヤしている。

「でも、確かに。
パパみたいにハゲでお腹ぽにょぽにょだったら
幻滅だよねー。」
真奈はのぞみの言葉に納得した様に頷いた。

でもまだ、話を聞きたくて食い下がった。
「なんて名前だったの?初彼。」

「うん?…えっとね。」
のぞみはうーんと言いながら思い出している。
「忘れたの?元彼の名前。」
真奈はありえないとオーバーに驚く。


「あ!思い出した。


『大地くん』」


名前を言うとブワッとあの頃の気持ちが
追い風に吹かれた様に全身に蘇った。
桜の花びらが舞い散る追い風だった。