さかなの眼

「のんちゃん!手紙を書くから!絶対!」

はーちゃんの目からポロポロと涙が落ちる。
「ありがとう。私も書くね。」

はーちゃんの後ろに貴大が静かに立ってる。
貴大は静かに見送ってくれているけど
鼻を啜る回数が多い。

私は小さな花のブーケを持って
校門の前で幼馴染と別れを惜しんでた。
ここからすぐに引越し先へと向かう。
私の涙はさっきのお別れ会で引っ込んだ。

痛いくらいにはーちゃんが私の手を握った。

冷たい木枯らしで冷えた手に
はーちゃんの暖かい体温が伝わる。

「のぞみ。新幹線の時間があるから行こう」
お父さんが私を急かすように言った。

「お父さん。
私、話したい人が…」

「まだ…」
そう言いかけて、のぞみは父の顔を見た。

父はひどく悲しい顔をしていた。
初めて見た顔に驚き
それ以上言えなかった。


「行こう」
父はのぞみの顔を見ずにそう言うと
葉月と貴大に見送りの礼を言った。
そして私を駅へと向かうタクシーに乗せた。


私はタクシーの窓から離れていく
幼馴染達と中学校の校舎を静かに
見つめるしかなかった。