恋するシングルマザーは忙しい!

奈緒子は、病院の受付カウンターに座り、患者の対応に追われていた。診察券を受け取り、予約を確認しながら、柔らかい笑顔で患者たちに声をかける。その隣では、都築雄二が会計業務を淡々とこなしている。

「鈴木さん、今日はこれでお会計終わりです。次回は2週間後ですね。お大事に。」都築がそう言って微笑むと、患者の女性が「あなた、いつも感じがいいわね」と嬉しそうに返す。そのやり取りに奈緒子は小さく笑いながら、隣で控えめに声をかけた。
「都築君、また褒められてるじゃない。」
「いやいや、奈緒子さんほどじゃないですよ。」都築は少し照れくさそうに目をそらした。

午前の診療が終わり、受付カウンターがひと段落すると、奈緒子と都築はスタッフルームに戻り、簡単な昼食をとることにした。奈緒子は用意してきた手作りのお弁当を広げ、都築はコンビニのサンドイッチを袋から取り出した。

「手作りですか? 奈緒子さん、さすがですね。」都築がふと話しかける。
「そうね、家に材料が余ってたから作っただけよ。都築君は相変わらずコンビニランチなのね。」奈緒子はそう言いながら、おかずを一口食べた。
「まあ、料理はあまり得意じゃないので…。」都築は苦笑いを浮かべながら答えたが、ふと真剣な目で奈緒子を見た。
「でも、奈緒子さんみたいな人が作るお弁当って、きっと家族が嬉しいでしょうね。」
「えっ?」奈緒子は驚いて顔を上げる。都築は少しだけ顔を赤らめながら、慌てて話を続けた。
「いや、その…なんていうか、手作りの料理って温かみがあるというか…。家族を想って作る感じが伝わってくるから、素敵だなって。」

奈緒子は一瞬戸惑いながらも、微笑んだ。
「そんな風に言われると嬉しいけど、正直、息子にはあまり感謝されてないかもね。もう19歳だし、男の子ってそんなものよ。」
「そうですか?」都築は少し首を傾げながら、柔らかく笑った。「きっと奈緒子さんが思ってる以上に、感謝してると思いますよ。」

その言葉に奈緒子は少し照れくさそうに笑い返したが、都築の目には、彼女に対するほんのりとした憧れと優しさが宿っていた。