小さいころ、氷の上で輝くお姉ちゃんに憧れて、同じスケート教室に通ったことがある。
けれど人前に出ることが苦手で体を動かすことも得意ではなかった私に、どうやらフィギュアスケートは向いていなかったらしい。
いくら練習してもなかなか上達できず、そのためスケート教室は1年でやめてしまった。
私がそんなことをしているあいだにも、お姉ちゃんはスケートの技術をどんどんと磨いていった。
いつしか将来を期待される選手になり、お父さんは資金繰りに、お母さんは練習や試合の同行にと、両親ともにお姉ちゃんにかかる時間が多くなっていったのだ。
忙しい両親とお姉ちゃんを眺めながら、私は家の中で一人で過ごすことが多くなった。
寂しいと思うこともあったけれど、そんなときは本を読むようにした。
読書は一人でもできることだし、物語にのめり込んでいれば家族がそばにいない寂しさも忘れられる。
なんの気なしに始めたことだったけれど、そのうち自分の知らないいろんな世界を覗き込める本の魅力に取り憑かれて、私は図書館で何冊も本を借りるようになった。
自分でも小説を書いてみようと思い立ったのは、中学生になってすぐのころのことだ。
友達に流行りの恋愛小説を薦められ、その小説が掲載されているネット上の投稿サイトを知ったのだ。
誰でも気軽に好きな話を書くことができるそのサイトに、私はすぐに興味を持った。
昔から作文や感想文を書くのはそれほど苦手ではないし、もしかしたら私にも小説が書けるかもしれない。
そう考えた私は中学1年生の夏休み、ネット上で小説を書き始めることにしたのだった。
「う~~ん……」
けれど実際に始めてみると、小説を書くというのは思っていたよりも難しいことなのだと分かった。
自分が想像する景色や感情を言葉だけで表すには、私には経験も語彙力も圧倒的に足りないように思えた。
書いては消してを何度も繰り返して、それでも今の自分が持てるすべてを注いで作品を完成させると、なんとも言えない達成感がわき上がった。
自分の思いが形になるなんて、なんて素敵なことなのだろう。
そのうちに読んでくれた方から感想をもらえるようにもなって、私はますます小説を書くことに夢中になっていった。
叶うなら、将来はたくさんの人を楽しませることのできる小説家になりたい。
いつしかそんな淡い夢をみるようにまでなったのだ。
夜、今日もいつものように、スマートフォンで小説投稿サイトを開く。
サイトのトップに新しく増えていたバナーは、数ヶ月前から開催されていた小説コンテストの結果発表のものだ。
奇しくも瀬戸くんと同じ“青春”がテーマのこのコンテストに、私もひとつだけ作品を応募していた。
バナーをタップしてコンテストのページを開く。
このコンテストの一番上の賞は金賞、その次が銀賞で、ここまでの賞を受賞すれば書いた小説が書籍化されるらしい。
今回は金賞が一作、銀賞が二作受賞していた。
その下に特別賞や努力賞が続いていくけれど、しかしいくら画面をスクロールしても私の名前は掲載されていなかった。
「また落ちちゃった」
はははっと、乾いた笑い声とともに肩を落とす。
受賞の場合はサイトに登録してあるメールアドレスに事前連絡があるそうだから、落選していることはページを開く前から分かっていた。
けれど落ち込む理由はそこではない。
コンテストページの下部には、受賞には至らなかったものの最終選考まで残った作品と作者の名前が掲載される。
けれどそこにも私の名前はなかったのだ。
「はぁ……」
コンテストに落ちるのはこれで4回目だ。
しかも受賞はもちろん、最終候補にも名前が挙がらないだなんて、私の書く物語はどれほど魅力がないのだろう。
もしかしたら、私には小説を書くことなんて向いていなかったのかもしれない。
けれど人前に出ることが苦手で体を動かすことも得意ではなかった私に、どうやらフィギュアスケートは向いていなかったらしい。
いくら練習してもなかなか上達できず、そのためスケート教室は1年でやめてしまった。
私がそんなことをしているあいだにも、お姉ちゃんはスケートの技術をどんどんと磨いていった。
いつしか将来を期待される選手になり、お父さんは資金繰りに、お母さんは練習や試合の同行にと、両親ともにお姉ちゃんにかかる時間が多くなっていったのだ。
忙しい両親とお姉ちゃんを眺めながら、私は家の中で一人で過ごすことが多くなった。
寂しいと思うこともあったけれど、そんなときは本を読むようにした。
読書は一人でもできることだし、物語にのめり込んでいれば家族がそばにいない寂しさも忘れられる。
なんの気なしに始めたことだったけれど、そのうち自分の知らないいろんな世界を覗き込める本の魅力に取り憑かれて、私は図書館で何冊も本を借りるようになった。
自分でも小説を書いてみようと思い立ったのは、中学生になってすぐのころのことだ。
友達に流行りの恋愛小説を薦められ、その小説が掲載されているネット上の投稿サイトを知ったのだ。
誰でも気軽に好きな話を書くことができるそのサイトに、私はすぐに興味を持った。
昔から作文や感想文を書くのはそれほど苦手ではないし、もしかしたら私にも小説が書けるかもしれない。
そう考えた私は中学1年生の夏休み、ネット上で小説を書き始めることにしたのだった。
「う~~ん……」
けれど実際に始めてみると、小説を書くというのは思っていたよりも難しいことなのだと分かった。
自分が想像する景色や感情を言葉だけで表すには、私には経験も語彙力も圧倒的に足りないように思えた。
書いては消してを何度も繰り返して、それでも今の自分が持てるすべてを注いで作品を完成させると、なんとも言えない達成感がわき上がった。
自分の思いが形になるなんて、なんて素敵なことなのだろう。
そのうちに読んでくれた方から感想をもらえるようにもなって、私はますます小説を書くことに夢中になっていった。
叶うなら、将来はたくさんの人を楽しませることのできる小説家になりたい。
いつしかそんな淡い夢をみるようにまでなったのだ。
夜、今日もいつものように、スマートフォンで小説投稿サイトを開く。
サイトのトップに新しく増えていたバナーは、数ヶ月前から開催されていた小説コンテストの結果発表のものだ。
奇しくも瀬戸くんと同じ“青春”がテーマのこのコンテストに、私もひとつだけ作品を応募していた。
バナーをタップしてコンテストのページを開く。
このコンテストの一番上の賞は金賞、その次が銀賞で、ここまでの賞を受賞すれば書いた小説が書籍化されるらしい。
今回は金賞が一作、銀賞が二作受賞していた。
その下に特別賞や努力賞が続いていくけれど、しかしいくら画面をスクロールしても私の名前は掲載されていなかった。
「また落ちちゃった」
はははっと、乾いた笑い声とともに肩を落とす。
受賞の場合はサイトに登録してあるメールアドレスに事前連絡があるそうだから、落選していることはページを開く前から分かっていた。
けれど落ち込む理由はそこではない。
コンテストページの下部には、受賞には至らなかったものの最終選考まで残った作品と作者の名前が掲載される。
けれどそこにも私の名前はなかったのだ。
「はぁ……」
コンテストに落ちるのはこれで4回目だ。
しかも受賞はもちろん、最終候補にも名前が挙がらないだなんて、私の書く物語はどれほど魅力がないのだろう。
もしかしたら、私には小説を書くことなんて向いていなかったのかもしれない。


