名もなき星が瞬く

「俺はここから離れられないけど、せっかくだから未央は会場で観てこいよ」

「うん。ありがとう」

上映中も不測の事態に備えなければいけないため、瞬矢はステージ裏から離れることはできないらしい。
瞬矢と一緒に観られないのは寂しいけれど、彼の代わりにこの瞬間を目に焼き付けようと、私は体育館全体が見渡せる一番後ろの席に座った。

文化祭全体の盛り上がりもあり、客席は満員だ。
周りから期待を感じる声も聞こえてきて、心臓がバクバクと音を立てる。

どうか私たちの映画がお客さんの心に届きますように。

やがて上演開始のブザーが鳴ると、私はひとつ息を吸ってから、目の前のスクリーンを見つめた。


「最後に上映するのは、3年生の瀬戸瞬矢と辻原未央により制作された映画、『光』です。どうぞご覧ください」





「未央~~!」

映画の上演が終わり、最初に声をかけてくれたのは、近くの席で観てくれていたというお姉ちゃんだった。
たくさん涙を流したのか、彼女の目は真っ赤に腫れてしまっている。
そして私を見つけるなり、お姉ちゃんは飛びかかるように抱きついてきたのだった。

「ねぇ、映画めちゃくちゃよかったよ! 私もうぼろぼろ泣いちゃった!」

「本当? よかったぁ」

「脚本担当ってことは、未央があの話を考えたってことでしょ? それに演技も上手だったし、もしかして私の妹は天才!?」

「もう。お姉ちゃん、大げさだって」

お姉ちゃんにぎゅうぎゅうと抱きしめられ、苦しさに声を上げる。
けれど私たちの映画が誰かの心を打ったのだと知り、私は嬉しさで胸がいっぱいだった。
その証拠に上演後、大きな拍手がなかなか鳴り止まなかったのだから。

「未央がこんなことしてただなんて、お母さんぜんぜん知らなかった」

ふと、お姉ちゃんの隣で映画を観ていたというお母さんが、ぼんやりとした様子で言葉を発した。

映画づくりのことは私が伝えられていなかったのだから知らなくて当然だ。
けれどお母さんは「そういうことじゃないの」と首を横に振った。

「つい莉央にかかりきりになって、未央に我慢させてしまっていることは分かってたけど、あなたの話すらもちゃんと聞けていなかったのね」

お母さんが声に後悔を滲ませる。

「ううん、そんなことないよ」

けれど今度は私が首を振り、お母さんのことを抱きしめた。

「私もこれからは、思っていることをちゃんと言葉にするね」



「お疲れ」

「瞬矢も。本当にお疲れ様」

映画の上映後。
興奮が冷めやらぬ会場を抜け出し、私と瞬矢は旧校舎の影で落ち合っていた。
体育館での万雷の拍手が嘘だったかのように、この辺りはしんと静まり返っている。

「これ、模擬店で買ったから未央にもやる」

「わっ、ありがと」

そう言われて瞬矢から手渡されたのは、模擬店で売られているというラムネだった。
薄い水色の容器が、太陽の光を反射してきらきらと光っている。

「じゃ、 映画の大成功を祝して乾杯」