名もなき星が瞬く

「うん、最高。おかげですげーいい画が撮れた」

「それならよかった」

「にしてもほんと驚いたよ。よくこんなの先生たちに許してもらえたな」

「そりゃあもう大変だったんだからね」

屋上で虹をつくりたいとお願いをしたとき、初めは黒川先生にも反対をされた。
けれどなんとか先生たちを説得して、危ないことはしない、地上に水を落とさない、放水は1分だけを条件にようやく許可をもらうことができたのだ。

自分一人で難題を解決できたことが誇らしくて、胸を張る。
ずっと後ろ向きで気弱に生きてきた私が、こんなふうに意見を押し通せるようになっただなんて、自分でも驚くべきことだった。

「ほら。未央も見てくれよ」

瞬矢が撮ったばかりの虹を液晶に映し出す。
それに目を落としてから、私は改めて彼に向き直った。

「どうかしたか?」

「私、瞬矢に伝えたいことがあって」

「なんだよ。もしかして愛の告白?」

「まあ、似たようなものかも」

ふざける瞬矢にあえて乗っかると、彼は意外そうに口をぽかんと開いた。
普段はあまり見られないその表情に、してやったりと笑みをこぼす。

「瞬矢さ、前に私の文章を読んで『景色が目に浮かぶ』って言ってくれたでしょ」

「あ、ああ」

「私、あの言葉がすごく嬉しかったんだ」

けれどまだ自分の書く文章がまだ拙いことは分かっていた。
それでもこれからもっと表現力を磨けば、いつか目に映るすべてを(つぶさ)に言葉にできるようになるかもしれない。

ううん、かもしれないじゃなくて、絶対にやってみせるんだ。

「私は瞬矢の目になりたい」

「俺の目……?」

「そう。私の言葉で、そのまぶたにいろんな景色を映すの。たとえ目が見えなくなっても、大好きな映画を撮り続けられるように」

そう言うと、瞬矢の目は大きく見開かれた。

「どれだけ時間がかかってもいいじゃん。これからもずっと、おじいちゃんとおばあちゃんになるまで、たくさんの映画を撮ろうよ。瞬矢の撮りたい景色を全部」

「未央……」

「私が諦めたりなんかさせないから」

そう力強く言い切ると、瞬矢は口元を震わせてから、小さく笑った。

「愛の告白どころか、それもうプロポーズじゃん」

「たしかに、そうかもね」

「……できるのかな、そんなこと」

「できるよ。私と瞬矢なら、どんなことだって叶えられる」

「ああ、そうだな」

二人で花火を見たあの日のように、瞬矢の目から涙が溢れる。
それでもあの日とは違い、彼は苦しみから解放されたように、安らかな笑顔を見せてくれた。

「それならもう、何も怖くないな」

瞬矢に左手を引かれる。
そのまま、私は彼の腕に抱きしめられた。

「ありがとう、未央」

「うん」