ラストシーンを思いついてから1週間後。
雲ひとつない晴天の日、「ついに映画のラストが決まった」と瞬矢に報告すると、彼は目を輝かせながら喜んでくれた。
「本当か!?」
「うん。それを今日、瞬矢に撮ってもらいたいの」
「分かった。どんな結末なんだ?」
「それは見てからのお楽しみ」
人差し指を唇に当て、“秘密”のポーズをつくってから微笑む。
私からの突然のサプライズに、瞬矢は子供のように飛び跳ねながら期待を表していた。
「もう準備は整えてあるから、これから一緒に屋上に行こう」
「おお、屋上で撮るのか。なんか楽しみだな」
屋上は普段、立ち入り禁止の場所だ。
けれど私は学校に頼み込んで、特別に撮影許可をもらったのだ。
瞬矢を伴い、新校舎の最上階まで階段を上っていく。
すると彼は、まるで屋上への道しるべのように伸びている青い物体を見つけ、それを指差した。
「なんなんだ? このホース」
それは私が何本も繋ぎ合わせて伸ばした延長ホースだった。
近くの水道から始まり、ホースの先端は屋上へと続いている。
「いいからいいから。瞬矢はちゃんとカメラを構えててね」
頭にはてなを浮かべる瞬矢の背中を押し、私はついに屋上のドアを開けた。
さんさんと太陽の光が降り注ぐその場所に、二人そろって足を踏み入れる。
「じゃあ、さっそくいくよ」
用意しておいたホースを手に取る。
そしてその先に取り付けたノズルを思いきり握り、私は勢いよく水のシャワーを出した。
「おい、結局俺は何を撮れば――」
訳が分かっていない瞬矢の戸惑った声が響く。
その不思議そうな顔に笑みだけを向け、私はノズルを持った腕を高く持ち上げた。
私の出したシャワーが大きな放物線を描く。
たちまち雨上がりのような香りが立ち上ったかと思えば、次の瞬間、その放物線の中に七色の光が現れたのだった。
そう、私がつくり出したかったのは――。
「虹……」
瞬矢が息を呑んだ気配がする。
学校の空にオーロラを出すことはできない。
けれど虹ならつくり出すことができるのではないかと私は考えたのだ。
この青空の下、生まれたばかりの虹が大きな弧を描く。
「角度とかどうかな?」
「ちょ、ちょっと待て。もう少しホースを右に……そう、そのまま」
「綺麗に撮ってね」
「ああ。任せろ」
映画監督の顔に戻った瞬矢が、真剣な目でカメラを構える。
それを見て、私はできるだけ高く遠くに水を放った。
……ああ、思ったとおり、すごく綺麗だ。
七色にきらめく虹を見て、その思い描いた景色にホッと息を吐く。
やかで満足したように瞬矢が顔を上げると、私はようやく放水を止めた。
「映画のラストは、主人公が天国にいる男子生徒に向かって、感謝を込めて虹をつくる。こんな感じでどうかな」
まだ興奮が冷めやらない顔をしている瞬矢に近づき、ラストシーンに込めた意味を説明する。
すると瞬矢は大きく頷き、ニカッと最上級の笑顔を見せてくれた。
雲ひとつない晴天の日、「ついに映画のラストが決まった」と瞬矢に報告すると、彼は目を輝かせながら喜んでくれた。
「本当か!?」
「うん。それを今日、瞬矢に撮ってもらいたいの」
「分かった。どんな結末なんだ?」
「それは見てからのお楽しみ」
人差し指を唇に当て、“秘密”のポーズをつくってから微笑む。
私からの突然のサプライズに、瞬矢は子供のように飛び跳ねながら期待を表していた。
「もう準備は整えてあるから、これから一緒に屋上に行こう」
「おお、屋上で撮るのか。なんか楽しみだな」
屋上は普段、立ち入り禁止の場所だ。
けれど私は学校に頼み込んで、特別に撮影許可をもらったのだ。
瞬矢を伴い、新校舎の最上階まで階段を上っていく。
すると彼は、まるで屋上への道しるべのように伸びている青い物体を見つけ、それを指差した。
「なんなんだ? このホース」
それは私が何本も繋ぎ合わせて伸ばした延長ホースだった。
近くの水道から始まり、ホースの先端は屋上へと続いている。
「いいからいいから。瞬矢はちゃんとカメラを構えててね」
頭にはてなを浮かべる瞬矢の背中を押し、私はついに屋上のドアを開けた。
さんさんと太陽の光が降り注ぐその場所に、二人そろって足を踏み入れる。
「じゃあ、さっそくいくよ」
用意しておいたホースを手に取る。
そしてその先に取り付けたノズルを思いきり握り、私は勢いよく水のシャワーを出した。
「おい、結局俺は何を撮れば――」
訳が分かっていない瞬矢の戸惑った声が響く。
その不思議そうな顔に笑みだけを向け、私はノズルを持った腕を高く持ち上げた。
私の出したシャワーが大きな放物線を描く。
たちまち雨上がりのような香りが立ち上ったかと思えば、次の瞬間、その放物線の中に七色の光が現れたのだった。
そう、私がつくり出したかったのは――。
「虹……」
瞬矢が息を呑んだ気配がする。
学校の空にオーロラを出すことはできない。
けれど虹ならつくり出すことができるのではないかと私は考えたのだ。
この青空の下、生まれたばかりの虹が大きな弧を描く。
「角度とかどうかな?」
「ちょ、ちょっと待て。もう少しホースを右に……そう、そのまま」
「綺麗に撮ってね」
「ああ。任せろ」
映画監督の顔に戻った瞬矢が、真剣な目でカメラを構える。
それを見て、私はできるだけ高く遠くに水を放った。
……ああ、思ったとおり、すごく綺麗だ。
七色にきらめく虹を見て、その思い描いた景色にホッと息を吐く。
やかで満足したように瞬矢が顔を上げると、私はようやく放水を止めた。
「映画のラストは、主人公が天国にいる男子生徒に向かって、感謝を込めて虹をつくる。こんな感じでどうかな」
まだ興奮が冷めやらない顔をしている瞬矢に近づき、ラストシーンに込めた意味を説明する。
すると瞬矢は大きく頷き、ニカッと最上級の笑顔を見せてくれた。


