名もなき星が瞬く

私が同情したって、瞬矢を嫌な気持ちにさせるだけだ。
そう思い、思考を切り替えるように首を振っていると、瞬矢は突然私にデコピンをお見舞いした。
かすかにおでこに響いた衝撃に、目を丸くして彼を見上げる。

「きゅ、急に何するの!?」

「どうせ自分には何もできないとか思ってんだろ? だけど俺、未央にはほんとに感謝してるんだぜ?」

「えっ……?」

「あんな本音、家族にも言えなかった。だけど未央に初めて打ち明けられて、かなり気持ちが軽くなったんだ」

からからと笑いながら、「でも俺が泣いたことは忘れろよ」と、瞬矢がふざけた調子で言う。

この場面で笑顔を見せられる瞬矢はすごい。
きっと感謝をしてくれているというのも本当のことなのだろう。
だけど私はもう、それだけじゃ足りなかった。

瞬矢が私の人生を変えてくれたように、私も瞬矢の人生を変えたい。
私は瞬矢が生きたいと思える未来を、彼にあげたいんだ。



「みーお。なんか暗くない?」

家に帰ってからもソファーでぼんやりしてしていると、そんな姿をお姉ちゃんに見つかってしまった。
頬をつんつんと突かれ、心配してくれるお姉ちゃんに向かってあいまいな笑みをつくる。

「大丈夫。大したことじゃないよ」

「そう? じゃあ、悩める未央が笑顔になれるような話をしてあげようか」

そう言うと、お姉ちゃんは私の肩に腕を回し、ガシッと引き寄せた。

「私が笑顔になれる話?」

「そ。実は今度、トロントで開催される大きな大会に出られることが決まったんだけどさ」

「わぁ、すごいね」

「大事なのはそこじゃなくて、トロントってとこなの」

お姉ちゃんが意味深な笑みを浮かべる。

トロントって、たしかカナダ最大の都市のはずだ。
フィギュアスケートも盛んで、スケートリンクもかなりの数があるとお姉ちゃんから聞いたことがあったけれど。

「トロントに何かあるの?」

「実はね、あの辺って運がよければオーロラが見られるんだって。未央も応援に来てくれたら、一緒にオーロラを見に行こうよ」

そう言うと、お姉ちゃんはトロントで見られるというオーロラをスマートフォンで見せてくれた。
カーテン状のオーロラは、青や緑に色づいて雄大に広がっている。
これは日本ではあまり見られない光景だ。

「きれい……」

「でしょ? 生で見るともっとすごいんだって。絶対に一緒に行こうね」

お姉ちゃんの興奮した声を聞きながら、その美しい景色に、私は瞬矢のことを思い出していた。

きっと瞬矢ならこのオーロラだって一等美しく撮ってしまうのだろう。
映画のラストでも、こんなふうに劇的な絵で締めくくれたらいいのに。

「でも、日本じゃ無理だしなぁ……」

学校の上にオーロラを出現させるのは、現実的に考えて不可能だ。
ほのかに浮かんだラストシーンのイメージは、脆くも崩れ去っていく。

「あれ……?」

……だけど。
例えば、オーロラじゃないものを出現させることができたとしたら――?