名もなき星が瞬く

「未央といると欲が出る」

瞬矢の声が(かす)れて震える。

「アイデアを出し合ったり、意見をぶつけ合ったり、誰かと同じ作品をつくるのがこんなにも楽しいことだって知らなかった。これからも未央といろんな映画を撮りたい。もっと長い、それこそ映画館で放映できるような大作もつくってみたい」

「瞬矢……」

「そう考えるとさ、何も怖くなかったはずなのに、どんどん怖くなっていくんだよ。目が見えなくなるのは嫌だ。長生きして、ずっとずっと、たくさんの映画を撮っていたい」

瞬矢の足元に水滴がパタパタと落ちる。
私がそれに気づいた瞬間、彼は顔を上げ、苦しげに息を吐いた。

「これからも未央と同じ景色が見ていたいよ……!」

叫ぶような瞬矢の声が辺りに響き渡る。

その声に、いったいなんと返すことができただろう。
自分の無力さを噛みしめながら、私はただ、静かに涙を流し続ける瞬矢を見ていた。



心に大きな影を残したまま、あっという間に夏休みは明けてしまった。
始業式も終わり、まだ暑さの残る教室はどこか気だるい空気を漂わせている。

瞬矢に会うのはあの花火大会の日以来だった。
朝一番に教室に現れた彼は、やはりいつもの太陽のような笑顔をたたえていた。
今だってたくさんのクラスメイトに囲まれながら、その輪の中心で笑っている。

「未央」

ふと、クラスメイトの輪を抜け出してきた瞬矢は、私に近づくなりこっそりと耳打ちをした。

「夏休み中に編集作業もかなり進んだんだから、未央にも一回確認してもらいたいんだけど」

「うん、もちろん」

「じゃあまた旧校舎に集合な」

いつものように約束を交わし、瞬矢が離れていく。
その後ろ姿を、私はどこかもどかしい気持ちで見つめていた。



「ストーリーのある映像って初めて撮ったんだけど、けっこう俺に向いてると思うんだよな」

放課後。
旧校舎に出向き、二人並んで中央階段の段差に座ると、瞬矢はさっそくスマートフォンに編集途中の映画を映し出してくれた。
私たちが丁寧に撮り溜めた映像は、ワンシーンずつ繋ぎ合わされ、ひとつの作品としての姿を見せ始めている。
場面ごとに色味が変わっており、セリフの文字や効果音も挿入され、その出来栄えは映画館で上映されているものにも引けを取らないと思った。

「すごい……」

「だろ?」

スマートフォンの小さい画面の中で、私は食い入るように映像を見つめる。

やっぱりものすごいクオリティだ。
これを中学生がつくっただなんて、きっと誰も思えないだろう。
誰もが認める溢れんばかりの瞬矢の才能を、改めてまざまざと感じる。

「ほんと、瞬矢は映画をつくるために生まれてきたんだね」

……それなのに、その才能を近い将来、活かすことができなくなるかもしれないだなんて。
あまりにも残酷な現実を思い出し、私はたまらず下を向いた。

「そんな顔すんなって」

「……ごめん」