「ん? どうかした?」
「今日は本当にありがとな。おかげで最高の映像が撮れた」
「そんな。私は大したことなんてしてないよ」
素直に感謝を伝えられたことが照れ臭くて、私はぶっきらぼうに返事をした。
なんとなく瞬矢と目を合わせているのが恥ずかしくなり、何も見えるものなんてないのにそっぽを向いてしまう。
「何も怖くなかったんだ」
ふと、瞬矢は続けて独り言のようにそう言った。
「え……?」
“何も怖くなかった”という言葉の意味が分からず、慌てて瞬矢に向き直る。
いつだって笑顔を絶やさない彼の表情が、なぜだか今はとても儚く見えるような気がした。
「人よりも時間は短いかもしれないけど、目が見えなくなる最後の最後まで映画を撮っていればいいって思ってた。それで――」
瞬矢の声が一瞬だけ止まる。
それから彼は覚悟を決めたように私を見据えた。
「――それができなくなったら、潔く死んでやろうって決めてたんだ」
“死”という強い言葉に、心臓が嫌な音を立てる。
いつも元気で明るい、クラスの太陽である瞬矢から出た言葉には思えず、私は耳を疑った。
目が見えなくなるというのは、瞬矢にとっては特に辛いことだろう。
けれど何も、命を断つまでのことではないはずだ。
「死ぬって……なんでそんな……」
震える声を抑えながら、やっとのことでそう聞くと、瞬矢は自嘲するように笑った。
「そうしたらきっと、瀬戸瞬矢はソーセイの天才って呼ばれる。その名前とともに、俺の遺した映像がいろんな人の目に触れるんだ。だったら半端に生きるよりも、その方がいいと思った」
あまりにも現実離れした瞬矢の話に言葉を失ってしまう。
彼の映像への情熱は、自分の命よりも重いものなのか。
改めてその覚悟の強さを知り、私は呆然としていた。
「だから少しでも目が見えているうちに、一刻も早くいい映画を撮りたくて、脚本を書けるやつを探してたんだ。そんなときに未央のノートを読んで、未央なら絶対にいい脚本を書いてくれるって直感した」
そう言われて、どうして私を映画づくりに誘ってくれたのかを聞いたときのことを思い出す。
「私の書く文章には熱があるって言ってくれたよね」
私はずっと、瞬矢の言う“熱”の意味が分からなかったけれど。
「今気づいたけど、未央の持つ熱は“諦めない心”だったんだよ」
「諦めない心……?」
「未央が感じてた“羨ましい”とか“悔しい”って気持ちは、自分や未来を諦めていないからこそ出るものだろ?」
瞬矢の言うとおり、もしもすべてを諦めてしまっていたら、人は羨ましいとも悔しいとも思わないものなのかもしれない。
そうか、私は自分も未来も諦めたくなかったからこそ、あんなに苦しかったのか。
きっとその強い思いが“熱”として瞬矢に伝わっていたのだろう。
「俺にはそれがなかったんだ。今日の花火だって、最初から撮るのを諦めてたもんな。未央にセツナテキって言われたのも、きっとそのせいだ」
俯いた瞬矢の表情が少しずつ翳っていく。
「自分じゃ潔いつもりだったけど、俺はただ未来を諦めてただけだったんだよ。だから未央のひたむきさがほしいと思ったんだ」
どうして瞬矢がこんな私を必要としてくれたのか。
その理由を知って、私は体の奥底から何かが込み上げてくるような心地がした。
「今日は本当にありがとな。おかげで最高の映像が撮れた」
「そんな。私は大したことなんてしてないよ」
素直に感謝を伝えられたことが照れ臭くて、私はぶっきらぼうに返事をした。
なんとなく瞬矢と目を合わせているのが恥ずかしくなり、何も見えるものなんてないのにそっぽを向いてしまう。
「何も怖くなかったんだ」
ふと、瞬矢は続けて独り言のようにそう言った。
「え……?」
“何も怖くなかった”という言葉の意味が分からず、慌てて瞬矢に向き直る。
いつだって笑顔を絶やさない彼の表情が、なぜだか今はとても儚く見えるような気がした。
「人よりも時間は短いかもしれないけど、目が見えなくなる最後の最後まで映画を撮っていればいいって思ってた。それで――」
瞬矢の声が一瞬だけ止まる。
それから彼は覚悟を決めたように私を見据えた。
「――それができなくなったら、潔く死んでやろうって決めてたんだ」
“死”という強い言葉に、心臓が嫌な音を立てる。
いつも元気で明るい、クラスの太陽である瞬矢から出た言葉には思えず、私は耳を疑った。
目が見えなくなるというのは、瞬矢にとっては特に辛いことだろう。
けれど何も、命を断つまでのことではないはずだ。
「死ぬって……なんでそんな……」
震える声を抑えながら、やっとのことでそう聞くと、瞬矢は自嘲するように笑った。
「そうしたらきっと、瀬戸瞬矢はソーセイの天才って呼ばれる。その名前とともに、俺の遺した映像がいろんな人の目に触れるんだ。だったら半端に生きるよりも、その方がいいと思った」
あまりにも現実離れした瞬矢の話に言葉を失ってしまう。
彼の映像への情熱は、自分の命よりも重いものなのか。
改めてその覚悟の強さを知り、私は呆然としていた。
「だから少しでも目が見えているうちに、一刻も早くいい映画を撮りたくて、脚本を書けるやつを探してたんだ。そんなときに未央のノートを読んで、未央なら絶対にいい脚本を書いてくれるって直感した」
そう言われて、どうして私を映画づくりに誘ってくれたのかを聞いたときのことを思い出す。
「私の書く文章には熱があるって言ってくれたよね」
私はずっと、瞬矢の言う“熱”の意味が分からなかったけれど。
「今気づいたけど、未央の持つ熱は“諦めない心”だったんだよ」
「諦めない心……?」
「未央が感じてた“羨ましい”とか“悔しい”って気持ちは、自分や未来を諦めていないからこそ出るものだろ?」
瞬矢の言うとおり、もしもすべてを諦めてしまっていたら、人は羨ましいとも悔しいとも思わないものなのかもしれない。
そうか、私は自分も未来も諦めたくなかったからこそ、あんなに苦しかったのか。
きっとその強い思いが“熱”として瞬矢に伝わっていたのだろう。
「俺にはそれがなかったんだ。今日の花火だって、最初から撮るのを諦めてたもんな。未央にセツナテキって言われたのも、きっとそのせいだ」
俯いた瞬矢の表情が少しずつ翳っていく。
「自分じゃ潔いつもりだったけど、俺はただ未来を諦めてただけだったんだよ。だから未央のひたむきさがほしいと思ったんだ」
どうして瞬矢がこんな私を必要としてくれたのか。
その理由を知って、私は体の奥底から何かが込み上げてくるような心地がした。


