名もなき星が瞬く

「……ごめん。完全に八つ当たりだ」

「ううん。私も自分の考えを押しつけてごめん」

冷静になって考えてみれば、こんなものはただの私の自己満足だった。
きっと今、私はいたずらに瞬矢の心を傷つけてしまっている。

彼の表情がさらに歪んだ。
そんな顔をさせたかったわけではないのに。

「花火は余計な光がない場所の方が綺麗に撮れる。だけど俺はもう、そういう場所に行くことすら難しいんだよ」

「でも、瞬矢だって本当は行きたいんだよね」

「ああ、そうだよ。行きたいよ……!」

瞬矢の切実な声が響く。
その本音を聞いて、私は拳を握った。

「それなら私がサポートする。どんなに暗い場所に行っても、怪我なんかさせたりしない」

「未央……」

「瞬矢のことは絶対に守るから……!」

口から出たのはあまりにも大げさな言葉だ。
けれど、それが紛れもない私の本心でもあった。
私の言葉を聞いた瞬矢が、たじろぎながら苦笑する。

「なんだよそれ。かっこよすぎるだろ」

「私、本気だよ!?」

「分かってる。だけどどうして俺にそこまでしてくれんの」

どうしてって、そんなの決まっているじゃないか。

「劣等感に苦しんでた私を、瞬矢は救ってくれた。だから今度は、私が瞬矢の力になりたいの」

そう言うと、瞬矢は大きく目を見張ってから押し黙ってしまった。
おそらく答えに迷っているのだろう。
彼が頷いてくれるのを、強く祈りながら待つ。

「……この近くに、城跡の公園があるだろ」

そしてしばしの無言のあとに、瞬矢は突然そう言った。

彼の言うとおり、たしかここから1キロほど先に、昔お城が建っていたという丘があったはずだった。
私は行ったことがないけれど、今では道や緑が整えられ、大きな公園として利用されているらしい。

「前にそこで撮影をしたことがあるんだ。花火からは遠くなるけど、余計な光がなくて綺麗に撮れる」

「それって……」

「あの辺は街灯も少ないから、未央に連れて行ってもらうことになるけど」

おずおずと呟く瞬矢に、私は前のめりになりながら何度も首を縦に振った。

「うん……! 任せてよ」

「本当にいいんだな」

「もちろん!」

瞬矢が出してくれた願いを、二つ返事で引き受ける。

この願いを叶えることができたら、少しは彼に恩返しができるだろうか。
そう考えながら、私はさっそく花火撮影の計画を立てることにした。



花火大会の日はすぐにやってきた。

打ち上げ開始は19時半からの予定だ。
私と瞬矢は17時に中学の校門前に待ち合わせをして、城跡の公園へと向かうことになっていた。
夏真っ盛りである今は日も長く、まだ暮れる様子もないけれど、日中よりは気温が下がったような気がする。
それでも少し汗ばむほどには暑さは残っていた。

「それ、全部機材?」

「うん。せっかく行くならこだわって撮りたいと思って、大量に持ってきた」