名もなき星が瞬く

「本音ノート……」

あんなにも毎日のように書き殴っていた本音ノート。
しかし最近ではそれを開くことすらせずに、引き出しの奥にしまい込んでいた。
いったいどんなことを書いていたんだっけと、久しぶりにノートのページをめくってみる。

そこにはまるで呪いのような文字がびっしりと並んでいた。
それを見て、あのころの自分の苦しみを思い出す。
そして私はふと、あるページで手を止めた。

【誰かの才能が眩しい】
【私も認められたい】
【もっと尊重されたい】
【これ以上、人を羨ましがってばかりいたくない】

【誰か見つけて】
【私を見つけて】

それは瞬矢から映画制作に誘われる少し前に書いた言葉だった。
劣等感と承認欲求に押し潰されそうだったあのとき、瞬矢が私の人生を変えると言ってくれたのだ。
あの言葉に、私はどれだけ救われただろう。

瞬矢は私を見つけてくれた。
苦しいだけの日々を変えてくれた。
だからこそ今度は私が、瞬矢の気持ちを救いたいのに。

「ああ、もうっ……!」

無力な私にできることが、何ひとつ思いつかない。

悔しさに唇を噛みしめる。
そうして結局ラストシーンの脚本も出来上がらないまま、無情にも学校は夏休みに入ってしまったのだった。



夏休みに入り、久しぶりに瞬矢に会うことができたのは8月最初の模試の日だった。
近くの私立高校で行われたその模試を、瞬矢は私と同じ教室で受けていた。
病気のことを告白してくれたときとは違い、彼はいつもの明るい顔に戻っている。

「あーやっと終わったー」

5教科目の試験が終わると、すべての力を使い果たしたらしい瞬矢は、疲れた顔をしながら問題文で顔を仰いでいた。
そんな彼に近づき、「このあと、ちょっといい?」と声をかける。

「未央。どうかしたか?」

映画づくりの話をするのだと思っているのか、教室に残ってくれた瞬矢は弾んだ声でそう言った。

「来週の花火大会のことなんだけどさ」

しかし“花火大会”という単語を出した瞬間に、瞬矢の表情が少しだけ曇った。
触れられたくない話題だと言うことは理解しつつ、それでも私の考えを伝えようと彼に迫る。

「私と一緒に花火を撮りに行こうよ」

そう言うと、瞬矢は苦しそうに眉間に皺を寄せた。

「言ったろ。それは無理なんだって」

「やってみないと分からないじゃん。私にできることならなんでもするから」

私が瞬矢に対してできることはなんだろう。
そう考えて思いついたのは、一緒に花火の撮影に行くということだった。

もちろん簡単にできることではないと分かっている。
これが余計なお世話だということも。
それでも瞬矢だって本当は行きたいと言っていたし、二人で力を合わせれば不可能なことではないはずなのだ。
そう思って提案したのだけれど、彼はなかなか頷いてはくれなかった。

「なんで未央がそこまでムキになってるんだよ」

「別にムキになんてなってない。それにやりたいことを最初から諦めるなんて、瞬矢らしくないよ」

「俺らしいって何? 未央に俺に何が分かんの!?」

珍しく語気が強くなった瞬矢にハッとする。
瞬矢の方もそんなことを言うつもりはなかったのか、驚いたように目を見開いてから俯いてしまった。