名もなき星が瞬く

「絶対に壊さないように気をつけるね……」

「ははっ。そんな怖がらなくても大丈夫だって。未央なら大事に扱ってくれるって分かってるし」

瀬戸くんのから信頼はありがたいけれど、慎重になるのに越したことはないだろう。
なるべく緊張が和らぐように深呼吸をして、もう一度しっかりとカメラを持ち直す。

「まずは両手を胸の高さにまで持ってくる。それから両脇を締めて、左手でカメラの底を支えてみて」

「こう……?」

「そうそう。上手いじゃん」

言われるがままにカメラを構える。
するとなんだかプロのカメラマンになったみたいで、自分でもちょっとかっこいいかもしれないと思った。

「ピントは自動で合うようになってるから、モニターを見ながらテキトーに撮ってみて」

「うん、分かった」

瀬戸くんの見よう見まねで、私はカメラについている液晶モニターに目を落とした。
画面の真ん中に彼の姿を収めて、それからSTART/STOPと書かれたボタンを押す。

「ボタンを押してみたんだけど、これってちゃんと撮れてるのかな?」

「画面の右上に赤い丸が出てたら撮れてるはずなんだけど」

「あっ、うん! 出てるよ!」

「よっしオーケー!」

撮影が開始されていることが分かると、瀬戸くんはかしこまった様子でひとつだけ咳払いをした。

「えー、5月25日、月曜日。ただいま未央と映画をつくってまーす!」

モニター越しに、瀬戸くんが両手でピースをしているのが見える。
その動きは私が撮ってもらっているときと同じくらいにぎこちなくて、私は思わず笑みをこぼしてしまった。
彼は普段撮る側の人だから、撮られる側には慣れていないのかもしれない。

「こちらは旧校舎です。いやー、古いけどなかなか趣があっていいですねー」

「瀬戸くん、なんだかアナウンサーみたい」

「うわー。撮られるのってやっぱ緊張するし、けっこう難しいもんなんだな。いい勉強になるかも」

瀬戸くんが照れくさそうに頭をガシガシと掻く。
たしかにぎこちなくはあるけれど、彼は笑ったり真面目な顔をしたりふざけたり、表情がころころと変わる人だ。
だから画面映えがするし、私も撮っていてすごく楽しかった。

「今度は瀬戸くんが動いてるところも撮ってみたいな」

「おう。じゃあ次はあっちの教室も行こーぜ――って、痛っ!」

「わっ、大丈夫!?」

動き出した瀬戸くんは、どうやらすぐそばにあった柱に気づかず、右手を打ちつけてしまったらしい。
見れば、手の甲が赤くなってしまっている。

「痛そう……。どうしよう、保健室行く?」

「ちょっとぶつけただけだから大丈夫。もう痛くもねーし」

「もう。カメラを持つ手なんだから大事にしないと」

「ははっ、そうだな」

前にも机に足をぶつけたことがあったけれど、瀬戸くんは意外とおっちょこちょいなところがあるようだ。
決まりが悪そうに、瀬戸くんが指で頬を掻きながら苦笑いをする。
そんな彼を見て、私も釣られて笑ってしまった。