「脚本の書き方も調べて、見よう見まねで書いてみたんだ。まだ途中だけど、よかったら読んでみて?」
「おー! 読む読む!」
私からルーズリーフの束を受け取った瀬戸くんは、今度はとても真剣な顔でできたばかりの脚本を読み始めた。
映像制作のプロを目指している人の目に、生まれて初めて書いた私の脚本はどう映るのだろう。
じっくりと読み進めていく瀬戸くんは、やがて目を細めてにっこりと笑った。
「旧校舎の景色が目に浮かんで、すげーいい。やっぱ未央は文才あるよ」
「喜んでもらえたなら嬉しいけど」
正直に言うと、まだ自分が書いたものに自信は持てない。
だけど瀬戸くんが喜んでくれるなら、私はもっと頑張ってみようと思えるのだ。
「未央ー! 今日の放課後ヒマ?」
朝とは反対に瀬戸くんの方から声をかけられたのは、昼休みが終わる間際のことだった。
ご機嫌そうな顔をした瀬戸くんは、何かがついた紐を人差し指でブンブンと回している。
「うん。特に予定はないけど」
「よっしゃ! 実はさっき職員室に行って、旧校舎の使用許可を取ってきたんだ!」
「本当!?」
「おう! 校長に反対されかけて苦労したぜー」
瀬戸くんが指で回していたのは、どうやら旧校舎の鍵だったらしい。
銀色に光るその鍵を掲げられ、私は思わず拍手をした。
「でも黒川センセーが味方になってくれてさ。物を壊したり汚したりしなけりゃ撮影に使ってもいいって認めてもらった。放課後さっそくロケハンに行ってみようぜ!」
「うん!」
今朝脚本を渡したばかりなのに本当に話が早い。
けれど、きっとそれだけ瀬戸くんも私と映画をつくりたいと思ってくれているのだろう。
彼の本気を感じて、私はとても嬉しくなった。
「未央、瞬矢となんかやるの?」
「わぁっ!」
ふと、いつの間にか背後にいた友理ちゃんに声をかけられ、私は飛び上がりそうなほどに驚いてしまった。
振り向けば、友理ちゃんが不思議そうにまばたきをしている。
そりゃあクラスの中心にいる瀬戸くんと端っこにいる私が熱心に話をしていたら、何をしているのかと首を傾げてもおかしくはないだろう。
「うん。実は瀬戸くんの撮る映画の脚本を書くことになって」
「へぇ。なんか意外な展開になってるみたいだね」
私は家族にも友達にも小説を書いていることを明かしたことはない。
だから意外に思われるのは当然のことだった。
友理ちゃんはっきりした性格だから、もしかしたらこんな私が瀬戸くんと映画をつくるだなんて、実力の釣り合いが取れていないと思うかもしれない。
そう考えてびくびくとしていると、私の予想とは裏腹に、友理ちゃんはパッと顔色を明るくした。
「どういう経緯でそうなったかは分からないけど、なんかすごくいいじゃん」
「えっ……?」
「未央って控えめだからあんまり自分を出さないところあるけど、脚本を書くってことは、考えてることを表に出してくれるってことでしょ?」
そう言えば、前に瀬戸くんからも「あんまり自分のことを話さない」と、似たようなことを言われた。
それはたぶん自分の自信のなさから、発言することに臆病になってしまうせいだ。
「おー! 読む読む!」
私からルーズリーフの束を受け取った瀬戸くんは、今度はとても真剣な顔でできたばかりの脚本を読み始めた。
映像制作のプロを目指している人の目に、生まれて初めて書いた私の脚本はどう映るのだろう。
じっくりと読み進めていく瀬戸くんは、やがて目を細めてにっこりと笑った。
「旧校舎の景色が目に浮かんで、すげーいい。やっぱ未央は文才あるよ」
「喜んでもらえたなら嬉しいけど」
正直に言うと、まだ自分が書いたものに自信は持てない。
だけど瀬戸くんが喜んでくれるなら、私はもっと頑張ってみようと思えるのだ。
「未央ー! 今日の放課後ヒマ?」
朝とは反対に瀬戸くんの方から声をかけられたのは、昼休みが終わる間際のことだった。
ご機嫌そうな顔をした瀬戸くんは、何かがついた紐を人差し指でブンブンと回している。
「うん。特に予定はないけど」
「よっしゃ! 実はさっき職員室に行って、旧校舎の使用許可を取ってきたんだ!」
「本当!?」
「おう! 校長に反対されかけて苦労したぜー」
瀬戸くんが指で回していたのは、どうやら旧校舎の鍵だったらしい。
銀色に光るその鍵を掲げられ、私は思わず拍手をした。
「でも黒川センセーが味方になってくれてさ。物を壊したり汚したりしなけりゃ撮影に使ってもいいって認めてもらった。放課後さっそくロケハンに行ってみようぜ!」
「うん!」
今朝脚本を渡したばかりなのに本当に話が早い。
けれど、きっとそれだけ瀬戸くんも私と映画をつくりたいと思ってくれているのだろう。
彼の本気を感じて、私はとても嬉しくなった。
「未央、瞬矢となんかやるの?」
「わぁっ!」
ふと、いつの間にか背後にいた友理ちゃんに声をかけられ、私は飛び上がりそうなほどに驚いてしまった。
振り向けば、友理ちゃんが不思議そうにまばたきをしている。
そりゃあクラスの中心にいる瀬戸くんと端っこにいる私が熱心に話をしていたら、何をしているのかと首を傾げてもおかしくはないだろう。
「うん。実は瀬戸くんの撮る映画の脚本を書くことになって」
「へぇ。なんか意外な展開になってるみたいだね」
私は家族にも友達にも小説を書いていることを明かしたことはない。
だから意外に思われるのは当然のことだった。
友理ちゃんはっきりした性格だから、もしかしたらこんな私が瀬戸くんと映画をつくるだなんて、実力の釣り合いが取れていないと思うかもしれない。
そう考えてびくびくとしていると、私の予想とは裏腹に、友理ちゃんはパッと顔色を明るくした。
「どういう経緯でそうなったかは分からないけど、なんかすごくいいじゃん」
「えっ……?」
「未央って控えめだからあんまり自分を出さないところあるけど、脚本を書くってことは、考えてることを表に出してくれるってことでしょ?」
そう言えば、前に瀬戸くんからも「あんまり自分のことを話さない」と、似たようなことを言われた。
それはたぶん自分の自信のなさから、発言することに臆病になってしまうせいだ。


