3年2組のこの教室は、まるで小さな宇宙のようだと私は思う。
勉強が得意で全国模試でも上位になったことがある高橋くん。
ピアノが好きで海外留学を経験している麻生さん。
プロチームの下部組織に所属してサッカーに打ち込む清水くん。
流行に敏感でSNSのフォロワーがたくさんいる凛ちゃん。
私と同じクラスのみんなはそれぞれに光る才能を持っていて、見つけたばかりのその才能を磨き始めている。
中学生というのはきっとそういう時期なのだ。
自分の好きなことや得意なことを通して夢を見つけ、その夢を叶えるために努力を始める時期。
夢に向かって頑張っているみんなの姿は、まるで夜空の星たちのようにきらきらと輝いている。
だからこそ、この教室はまるで小さな宇宙のように、みんなの放つ光で溢れているのだ。
「いいなぁ……」
廊下側の一番後ろの席。
クラス全体が見渡せるこの席で、私・辻原未央は頬杖をつきながらクラスメイトたちを羨ましく思っていた。
私はみんなと違って、才能と呼べるようなものをひとつも持っていない。
学生の本分と言われる勉強の成績は中の中。
運動系も芸術系もそれほど得意ではなくて、顔がとてもかわいいわけでも、性格が特別優しいわけでもない。
ない、ない、何もない。
こんなにも眩しい星たちの中で、私だけが輝くことなく、宇宙の隅でくすぶっている。
私にはいったい何があるの?
みんなと同じように、何か光るものを持っているの?
「ホームルーム始めるぞー。席つけー」
暗い気持ちで教室全体を眺めていると、突然ガラッとドアが開き、担任の黒川先生が現れた。
その大きな声にハッとして、ぼんやりとしていた頭を切り替えるように背筋を正す。
騒がしかった教室内が静かになったころ、教壇に立った先生はひとつだけ咳払いをし、畏まった様子で窓際の一番前に座るクラスメイトへと視線を送った。
「まずは先ほどの全校集会でも表彰があったとおり、瀬戸が『青春CM大賞』のグランプリを獲得した。みんなからも改めて拍手を送ろう」
先生の呼びかけによって、あっという間にクラスに大きな拍手が巻き起こる。
一部の男子たちは、席まで立って歓声を上げた。
「瞬矢おめでとー!」
「おー、みんなありがとな」
みんなから送られる拍手を笑顔で受け止めながら感謝を伝える男子。
彼はこのきら星が集まる教室の中でも、まるで一等星のようにひときわ大きな輝きを放つ、瀬戸瞬矢というクラスメイトだった。
明るい性格で誰に対しても平等に接する瀬戸くんは、その人柄のよさでいつもクラスの中心にいる。
そしてどうやら、彼は映像制作の才能まで持っているらしい。
去年も一昨年も大きなコンテストで受賞して、何度も全校集会で表彰されていたのを覚えている。
今回は清涼飲料水の会社が手がける学生向けの映像コンテスト『青春CM大賞』にて、史上最年少でグランプリを獲得したというのだ。
「瞬矢の作ったスポドリのCMが流れるんだよね」
「テレビじゃなくてWebCMだけどな。来週から動画サイトで流れるらしいから、見かけたらよろしく」
「いや、それでもすげーよなぁ。将来は映画監督になりたいんだろ? そのうちアカデミー賞とか獲ったりして」
「今のうちにサインもらっとく? 高く売れるかも」
「おいおい、もらうなら大切にしてくれよ」
勉強が得意で全国模試でも上位になったことがある高橋くん。
ピアノが好きで海外留学を経験している麻生さん。
プロチームの下部組織に所属してサッカーに打ち込む清水くん。
流行に敏感でSNSのフォロワーがたくさんいる凛ちゃん。
私と同じクラスのみんなはそれぞれに光る才能を持っていて、見つけたばかりのその才能を磨き始めている。
中学生というのはきっとそういう時期なのだ。
自分の好きなことや得意なことを通して夢を見つけ、その夢を叶えるために努力を始める時期。
夢に向かって頑張っているみんなの姿は、まるで夜空の星たちのようにきらきらと輝いている。
だからこそ、この教室はまるで小さな宇宙のように、みんなの放つ光で溢れているのだ。
「いいなぁ……」
廊下側の一番後ろの席。
クラス全体が見渡せるこの席で、私・辻原未央は頬杖をつきながらクラスメイトたちを羨ましく思っていた。
私はみんなと違って、才能と呼べるようなものをひとつも持っていない。
学生の本分と言われる勉強の成績は中の中。
運動系も芸術系もそれほど得意ではなくて、顔がとてもかわいいわけでも、性格が特別優しいわけでもない。
ない、ない、何もない。
こんなにも眩しい星たちの中で、私だけが輝くことなく、宇宙の隅でくすぶっている。
私にはいったい何があるの?
みんなと同じように、何か光るものを持っているの?
「ホームルーム始めるぞー。席つけー」
暗い気持ちで教室全体を眺めていると、突然ガラッとドアが開き、担任の黒川先生が現れた。
その大きな声にハッとして、ぼんやりとしていた頭を切り替えるように背筋を正す。
騒がしかった教室内が静かになったころ、教壇に立った先生はひとつだけ咳払いをし、畏まった様子で窓際の一番前に座るクラスメイトへと視線を送った。
「まずは先ほどの全校集会でも表彰があったとおり、瀬戸が『青春CM大賞』のグランプリを獲得した。みんなからも改めて拍手を送ろう」
先生の呼びかけによって、あっという間にクラスに大きな拍手が巻き起こる。
一部の男子たちは、席まで立って歓声を上げた。
「瞬矢おめでとー!」
「おー、みんなありがとな」
みんなから送られる拍手を笑顔で受け止めながら感謝を伝える男子。
彼はこのきら星が集まる教室の中でも、まるで一等星のようにひときわ大きな輝きを放つ、瀬戸瞬矢というクラスメイトだった。
明るい性格で誰に対しても平等に接する瀬戸くんは、その人柄のよさでいつもクラスの中心にいる。
そしてどうやら、彼は映像制作の才能まで持っているらしい。
去年も一昨年も大きなコンテストで受賞して、何度も全校集会で表彰されていたのを覚えている。
今回は清涼飲料水の会社が手がける学生向けの映像コンテスト『青春CM大賞』にて、史上最年少でグランプリを獲得したというのだ。
「瞬矢の作ったスポドリのCMが流れるんだよね」
「テレビじゃなくてWebCMだけどな。来週から動画サイトで流れるらしいから、見かけたらよろしく」
「いや、それでもすげーよなぁ。将来は映画監督になりたいんだろ? そのうちアカデミー賞とか獲ったりして」
「今のうちにサインもらっとく? 高く売れるかも」
「おいおい、もらうなら大切にしてくれよ」


