俺の彼女は高校教師

 5時間目が始まっても香澄が戻ってこない。 「どうしたんだろう?」
「弘明君 探してきてくれませんか?」 先生も心配顔。
「行ってきます。」 「彼氏なんだからよ、助けてやれよ。」
奥山悦男がそう囃し立てる。 「言わないの。 そんなことは。」
律子が空かさず悦男に拳骨をお見舞いする。 みんなが爆笑している中、俺は香澄を探しに出た。
 「何処に行ったんだよ? こんな時に消えやがって。」 職員室の前でウロウロしていると美和が顔を出した。 「どうしたの?」
「香澄が居なくなったんだよ。」 「香澄ちゃんが?」
「そうなんだ。 修学旅行の話をしてたらいきなり教室を出て行ってそれっきり戻ってこないんだ。」 「分かった。 私も探すわ。」
「ありがとう。」 それで俺は放送室も覗いてみた。
「居ねえなあ。」 美和はというと保健室やら体育館やらを念入りに探しているらしい。
 俺はふと気になって昇降口に下りてみた。 「もしかして帰った?」
下駄箱を開けてみる。 「帰ってないなあ。」
 二階に上がろうとすると体育館から戻ってきた美和も焦っている。 「何処にも居ないのよ。」
「おかしいなあ。 後は音楽準備室とか司書室くらいだけど、、、。」 「準備室か、、、。 可能性が無いとは言えないなあ。」
 それで二人で準備室へ、、、。 「あらあらどうしたの?」
「香澄が居なくなったもんで、、、。」 「それで準備室に? やあねえ、私は拉致犯じゃないのよ。」
「拉致犯?」 「香澄ちゃんなら来てないわよ。 どっかに居るんじゃないの?」
「他人事だなあ。」 「あなたの彼女なんでしょう? しっかりしなさいよ。」
「当てが外れたか。 これじゃあ後は、、、。」 美和もどっか落ち着かない顔でキョロキョロしている。
「後は司書室ね。 外には出てないんでしょう?」 「だと思うんだ。 靴はそのままだから。」
 しかしその司書室にも香澄は居なかった。 「まさかトイレを片っ端から調べるわけにもいかないし、、、。」
そしたら5時間目終了のチャイムが鳴った。 「一度教室に戻るよ。」
「それがいいわ。 何か情報が有ったら教えてね。」 美和も職員室へ帰っていった。
 戻っては来たものの香澄は依然として出てこない。 「どうしたんだろうなあ?」
「校内には居なかったの?」 「何処にも居ないんだよ。 音楽準備室も見てきたけど。」
「まさかさあ、香澄 自殺する気じゃないだろうな?」 「それは有り得ないと思うよ。 落ち込んでたってそこまでは、、、。」
 みんなが話し合っている最中、俺はまた教室を出て行った。 「あいつやっぱり香澄が好きなんじゃないのか?」
「ずーーーーーーーーーーーーっと一緒に居るんだもん。 気になってるだけよ。」 「そうとは思えないけどなあ。」
 俺は体育館にやってきた。 ここの舞台裏とか中二階とか見てないことを思い出したから。
先生たちはどっか怪訝な顔をしてるけど何も言わずに見守ってくれている。 俺は階段に通じている扉を開いた。
 「あの野郎、何処まで行ったんだ?」 二階に上がると下の様子もよく見える。 「居ねえなあ。」
でも一か所だけ外に出れる扉が有る。 「ここなんて言うなよ。」
んで扉を開けてみると、、、。 「香澄ーー。」
「弘明君、、、。」 「何やってんだよ?」
「みんなが馬鹿にするから嫌になって、、、。」 「授業サボって探し回ったぞ。 馬鹿。」
「そうだったの? ごめん。」 「お前なあ、、、。」
 この狭い所で香澄は蹲っていた。 そんな香澄を抱き上げてみる。
「重たいなあ。」 「弘明君ほどじゃないから。」
「お前、尻が重過ぎるんだよ。」 「高橋先生より軽いもん。」
「比べるなっての。」 「弘明君だって、、、。」
 何か分からないけど突っ込み合いをしながら半泣きの香澄を連れて帰る。 「世話焼かされっぱなしだなあ。 俺って。」
「いいの。 私の彼氏なんだから。」 「そこがダメなのよ。 分かってないわねえ 香澄。」
「え、、、、。」 「弘明君だから笑って許してくれてるけど他の男だったら一発絶交よ。 気を付けなさい。」
「ごめん。 りっちゃん。」 今日の香澄はどっかしょんぼりしているみたい。
こうなると帰りは大変だなあ たぶん。

 放課後になりました。 いつも以上に香澄は俺にピッタリとくっ付いてて離れてくれません。
「どうしたんだよ?」 「何でもない。」
「何か有りそうだけどなあ。」 「無いってば。」
「そういう時ほど何か有るんだよなあ。 お前は。」 「そう見える?」
「私、寂しいですって顔に書いて有るぞ。」 (ギク、、、。)
「思った通りだろう? 喋っちまえよ。」 「弘明君が悪いんだから。」
「迫力無いなあ。 それで香澄かよ?」 「だって、、、。」
「律子にガッツリお説教されたな? お前。」 「うん。」
「正直でよろしい。」 「何よ 偉そうに。」
「オー、エンジンが掛かってきたかな?」 「そんなの知らないもん。 私は私だもん。」
「もうちっと頑張れ!」 「何を頑張るのよ? 馬鹿。」
「その調子。 その調子。」 「またやってるわ。 あの二人。」
「いいのよ。 ほっといて。 あれが二人のやり方なんだから。」 「そうねえ。 お説教したのも無駄だったわ。」
「たぶん、生まれ変わるまで分かんないと思うよ。 香澄なら。」 「そうよね。 根っからのお嬢様だもんね。」
小百合と律子は俺たちの突っ込み合いを聞きながら深い溜息を吐くのでした。

 俺は香澄に突っ込みながらいつものようにコンビニへ。 「あ、待てーーーーー‼」
香澄は俺が居なくなったことに気が付いたのか慌てて追いかけてきた。 ところが、、、。
「いたーーーーーーい。」 またまたあのドアに正面衝突して文句を言っているようだ。
バイト君もさすがに呆れ果てて舌打ちをしながらレジを打っている。 俺が最中を持っているのを見付けると、、、。
「またですか? あんたも好きだねえ。」って冷たく笑ってきた。 「しょうがないんだ。 子供の頃からくっ付いてるやつだから。」
「あのドアは自動じゃないんだって教えておいてください。 壊されたら堪ったもんじゃないから。」 「分かってるけどあいつは覚えないんだ。」
「そうっすか。」 バイト君がしょんぼりしたのを見届けてから外へ出る。
 「ほら、餌。」 「ワン‼」
「お前はアホか。」 「アホだもん。」
「よくそれで高校生になったなあ。」 「なる時にはなるのよ。 ウフ。」
 「きもいだけだからやめてくんねえか?」 「きもい? 私がきもいですって?」
「そういうこと。」 「ワワワワワ、りっちゃんたち。」
 「香澄さあ、いい加減に自分のこと分かったらどうよ? しょうがないお嬢様ねえ。」 「だって、、、。」
「そんなんじゃあ一生結婚は無理よ。」 「そこまで、、、。」
 何か知らんが今日の香澄は攻められっぱなしだ。 俺だって庇いようが無い。
律子が電車で行ってしまうとまたまた俺にくっ付いてきた。 「ねえ、何とかして。」
「何を?」 「りっちゃんたち。」
「お前がお嬢様をやめれば言わなくなるんだけどなあ。」 「でも、、、。」
そう言った香澄は俺に飛び込んでくるとワッと泣き始めた。 (これじゃあしばらくは動けないぞ。)
 好きヨ 好きよ 秋からも好きよ。 秋からも傍に居て。
誰かの歌が心の何処かで聞こえてきた。 でもこれじゃあ「愛してる。」なんて言えないしなあ。
 香澄はまだまだ胸の中で泣き続けてる。 俺はその頭を撫でてみた。