ここの川も何だか細くなったよなあ。 以前はもうちっと太かったはずなのに、、、。
再会橋と呼ばれている橋に来た。 いつからこう呼ばれてるんだろう?
その昔、売れなかった歌手が自殺しようと思ってここに来たら懐かしいおばあちゃんに会って励まされたとか、、、。 気を取り直して歌を作ったら売れたんだってね。
その懐かしいおばあちゃんって誰だったんだろう? もしかしてご先祖様?
なら、、、再会って言うのも分からんではないなあ。 「ご先祖様か、、、。」
その橋を渡って坂を下りる。 交差点を越えると目の前は市営の墓地に繋がっている。
ちょうどさあ、坂の上から目の前の供養塔がよく見えるんだよなあ。 霊感無くて良かった。
その前を左に折れてまっすぐ行くと二股路地が見えてくる。 右に折れてしばらく行くと俺の家だ。
鍵を開けて中に入る。 まだ誰も帰ってきてない。
姉ちゃんは新採用の社員を連れて旅行に行ってるし、父さんは部署を替わったとかで忙しそうだし、母さんは選挙が近いからって挨拶回りに忙しい。
俺は居間のテーブルにパンダ焼を置くとカップラーメンとおにぎりを持って部屋に引っ込んだ。 これからしばらくは誰とも話さない自由時間だ。
と思ったらスマホが鳴った。 「誰だろう?」
出てみると、、、。 「弘明さあ、暇?」
「何だ、金子か。 何か用か?」 「何かは無いだろう? ゲームでもしないか?」
「頭痛いからまた明日な。」 「おいおい、付き合い悪いなあ。」
何か騒いでるんだけど金子健太郎を無視して俺は電話を切った。
カップラーメンを啜りながらYouTubeを覗いてみる。 有名所のユーチューバーモいいけれど、なんか面白くないんだよなあ 最近。
だからって難しい話は分からないし歌ばかり聞いてるのも飽きるし、、、。
ってなわけで今日も川の音を聞くことにした。 何も考えなくてオッケー。
でもさあ、高橋先生が夢に出てきたんだよな? 俺たちって何か有るのか?
美和先生のお母さんは確か市議会議員だったよな。 いつも母さんと市役所の話をしてたっけ。
あそこの課長さんがどうの、こっちの部長さんがどうの、、、。 電話で盛り上がってたっけ。
その人の娘さんだって言ってたよな 美和先生。 何かを感じるなあ。
とはいってもまだまだ始まったばかり。 授業も始まってないんだからどんな人かも分からない。
もしかするともう彼氏も居たりしてなあ。 そんなことまで俺が考えることじゃないけどさ。
あの顔であのスタイルだろう? 絶対居るよな。
そんなことを考えながらうとうとしていたら「ただいま!」っていう元気な声が聞こえた。
まだまだ4時くらいなんだけど母さんが帰ってきたらしい。 「おー、パンダ焼。」
居間に入った母さんはパンダ焼を見付けたのか椅子に座って食べ始めた。 「うん、これはやっぱり美味しいなあ。」
お茶を飲みながら誰かと電話で喋っている。 「そうなの? うちもさあ、明日は総決起集会なのよ。 また忙しくなるわ。」
俺は二階の部屋を出て居間へ、、、。 「弘明 帰ってたの?」
「うん。 今日は入学式だったから。」 「そっか。 お前もいよいよ3年だねえ。 この先はどうするんだい?」
「分かんない。」 「分かんないって言ったって夏までにはどうするか決めるんだよ。」
「決められたらいいけど、、、。」 「そんなんじゃあ決まらないわ。 ゆっくり考えなさい。」
母さんも父さんも勉強のことはうるさく言わなかったんだよ いつだって。 常識だけは大切にしろってうるさく言われるけどね。
「算数だって足し算と引き算と掛け算と割り算が出来ればそれでいいんだよ。 町の仕事で二次方程式なんて使わないんだから。」
父さんもそう言って笑ってたっけ。
そんな我が家にも夜が来た。 夕食を済ませて部屋でゴロゴロしていると、、、。
一階から何か声が聞こえてきた。 あんだのうんだのって、、、まあ母さんたちもまだまだ元気だなあ。
とはいってもこれから3人目を産んでもらっても困るんだけど、、、。 誰が世話するんだよ?
俺も姉ちゃんも忙しくなるし母さんだって休めないんだからな。 それにしても元気がいいわ。
俺だって結婚したらああなるのかなあ? 寝転がったままで将来を思い描いてみる。
しかしまあどんな仕事をしているかも分からないしどんな相手と結婚するのかも分からないからか、何を想像しても実感が掴めない。
(紀子ってことも有るんだぞ。 吉江だってことも有り得るんだぞ。) クラスメートの顔を思い描いてみる。
しかし、どれもこれも合わないような気がして俺は窓を開けた。
夜の空気はひんやりしている。 昼間とはどっか違う気がする。
確かにうるさい連中が誰も居ないのだからそう感じても不思議じゃないな。
律子だって今は部屋に籠ってるはず。 こんな夜に出歩くやつも居ないだろう。
ふとスマホが鳴った。 (誰だろう?)と思って覗いたらラインだった。
「しょうがないな。 こんなのを送り付けてきて、、、。」 たまに居る。
何だか分からないのにメッセージを送ってくるやつ。 ただただうざいだけ。
それもさあ、無視してると勝手に怒りだすんだよなあ。 「送ってやってんのに見向きもしないのか?」って。
怒りたいなら勝手に怒ってくれよ。 俺は関係無いから。
ぼんやりしていると雨が降ってきた。 「雨って予報だったっけ?」
慌てて窓を閉める。 気付いたら母さんたちも静かになったみたいだ。
「まだ風呂に入ってなかったな。 入ってこようか。」 もう10時を過ぎている。
我が家では風呂を沸かしても特に急かされることも無い。 呑気だよなあ。
「冷めてたら沸かしてね。」って母さんに言われるくらいのもんだ。 それで服を脱いで風呂に入る。
姉ちゃんはまだまだ旅行から帰ってこない。 なんせ昨日行ったばかりなんだから。
今回は大阪と京都を回ってくるって言ってたな。 新人さんを連れてガイド研修をやるんだって。
旅行会社に就職したって聞いた時は驚いたよ。 まさか入れるとは思ってなかったから。
それと同じくらいに美和先生に会った時も驚いたんだ。 母さんの友達だとは聞いてるけど、、、。
そういえばさあ、母さんと楽しそうに話してたなあ。 俺は緊張しっぱなしだったよ。
だって算数が算数がって言うんだもん。 自慢じゃないけど二次方程式がやっと分かってきたところなんだから横でゴチャゴチャ言わないでほしいなあ。
さてさて夜通し降り続いた雨は朝になっても降り続いてます。 傘をさして歩くのってけっこう面倒。
油断するとさあ「何 水を飛ばしてるんだ!」って怒り出すおじさんが居たりするから。 関係無いだろう?
朝の駅に猛ダッシュ。 水溜まりを跳ねても文句は言わせない。
今日はオリエンテーション。 部活だとか教科書だとかゴチャゴチャした話がずっと続く。 うざいなあ。
そんなわけで電車を降りると律子たちも改札を出ようとしている所だった。 「おはよう!」
「あらあら弘明君 元気いいねえ。」 「おはようって言ってるだろう?」
「ああ、おはよう。」 「何だよ、ああって、、、。」
「気にしない気にしない。」 「一休みじゃないんだから、、、。」
「なあに? 一休みって?」 「律子 一休さんだよ。」
「そっか。 一休さんか。 つまんないの。」 「また始まった。」
相変わらず賑やかに話し続ける律子たちと一緒にバス通りを歩いていく。 行き過ぎる車が水を跳ねていく。
「きたねえもんだなあ。 考えてくれよ。」 「考えろって言ったって誰も考えないわよ。 車に乗ってたら濡れないんだから。」
「それはそうかもしれんけど、これじゃああんまりだぜ。」 バシャバシャと大型車が水溜まりを跳ねていく。
「けっこう降ったのねえ。」 「何感心してるのよ?」
「うち、マンションだからさあ気付かなくて。」 「え? お前んちマンションだったの?」
「今頃気付いたの? 遅過ぎ。」 「いいよ。 お前んちなんて興味も無いから。」
「ひどーーーい。 レディーの家に興味も無いなんて。」 「どっかの週刊誌じゃあるまいに。」
「やあ、おはよう!」 バス組の良太が走ってきた。
「そんなに走らなくても逃げないわよ。」 「え? プロポーズしたら逃げたじゃん。」
「あのねえ、あんたみたいな宇宙人にプロポーズされても嬉しくないのよねえ。」 「宇宙人? 俺が?」
「そうそう。 整形をやり直して出直しなさい。」 「お互い様だろう?」
「うわ、弘明君まで、、、。」 「また始まった。」
そんなわけで今日も賑やかな一日が始まるんだ。 ああ、憂鬱。
再会橋と呼ばれている橋に来た。 いつからこう呼ばれてるんだろう?
その昔、売れなかった歌手が自殺しようと思ってここに来たら懐かしいおばあちゃんに会って励まされたとか、、、。 気を取り直して歌を作ったら売れたんだってね。
その懐かしいおばあちゃんって誰だったんだろう? もしかしてご先祖様?
なら、、、再会って言うのも分からんではないなあ。 「ご先祖様か、、、。」
その橋を渡って坂を下りる。 交差点を越えると目の前は市営の墓地に繋がっている。
ちょうどさあ、坂の上から目の前の供養塔がよく見えるんだよなあ。 霊感無くて良かった。
その前を左に折れてまっすぐ行くと二股路地が見えてくる。 右に折れてしばらく行くと俺の家だ。
鍵を開けて中に入る。 まだ誰も帰ってきてない。
姉ちゃんは新採用の社員を連れて旅行に行ってるし、父さんは部署を替わったとかで忙しそうだし、母さんは選挙が近いからって挨拶回りに忙しい。
俺は居間のテーブルにパンダ焼を置くとカップラーメンとおにぎりを持って部屋に引っ込んだ。 これからしばらくは誰とも話さない自由時間だ。
と思ったらスマホが鳴った。 「誰だろう?」
出てみると、、、。 「弘明さあ、暇?」
「何だ、金子か。 何か用か?」 「何かは無いだろう? ゲームでもしないか?」
「頭痛いからまた明日な。」 「おいおい、付き合い悪いなあ。」
何か騒いでるんだけど金子健太郎を無視して俺は電話を切った。
カップラーメンを啜りながらYouTubeを覗いてみる。 有名所のユーチューバーモいいけれど、なんか面白くないんだよなあ 最近。
だからって難しい話は分からないし歌ばかり聞いてるのも飽きるし、、、。
ってなわけで今日も川の音を聞くことにした。 何も考えなくてオッケー。
でもさあ、高橋先生が夢に出てきたんだよな? 俺たちって何か有るのか?
美和先生のお母さんは確か市議会議員だったよな。 いつも母さんと市役所の話をしてたっけ。
あそこの課長さんがどうの、こっちの部長さんがどうの、、、。 電話で盛り上がってたっけ。
その人の娘さんだって言ってたよな 美和先生。 何かを感じるなあ。
とはいってもまだまだ始まったばかり。 授業も始まってないんだからどんな人かも分からない。
もしかするともう彼氏も居たりしてなあ。 そんなことまで俺が考えることじゃないけどさ。
あの顔であのスタイルだろう? 絶対居るよな。
そんなことを考えながらうとうとしていたら「ただいま!」っていう元気な声が聞こえた。
まだまだ4時くらいなんだけど母さんが帰ってきたらしい。 「おー、パンダ焼。」
居間に入った母さんはパンダ焼を見付けたのか椅子に座って食べ始めた。 「うん、これはやっぱり美味しいなあ。」
お茶を飲みながら誰かと電話で喋っている。 「そうなの? うちもさあ、明日は総決起集会なのよ。 また忙しくなるわ。」
俺は二階の部屋を出て居間へ、、、。 「弘明 帰ってたの?」
「うん。 今日は入学式だったから。」 「そっか。 お前もいよいよ3年だねえ。 この先はどうするんだい?」
「分かんない。」 「分かんないって言ったって夏までにはどうするか決めるんだよ。」
「決められたらいいけど、、、。」 「そんなんじゃあ決まらないわ。 ゆっくり考えなさい。」
母さんも父さんも勉強のことはうるさく言わなかったんだよ いつだって。 常識だけは大切にしろってうるさく言われるけどね。
「算数だって足し算と引き算と掛け算と割り算が出来ればそれでいいんだよ。 町の仕事で二次方程式なんて使わないんだから。」
父さんもそう言って笑ってたっけ。
そんな我が家にも夜が来た。 夕食を済ませて部屋でゴロゴロしていると、、、。
一階から何か声が聞こえてきた。 あんだのうんだのって、、、まあ母さんたちもまだまだ元気だなあ。
とはいってもこれから3人目を産んでもらっても困るんだけど、、、。 誰が世話するんだよ?
俺も姉ちゃんも忙しくなるし母さんだって休めないんだからな。 それにしても元気がいいわ。
俺だって結婚したらああなるのかなあ? 寝転がったままで将来を思い描いてみる。
しかしまあどんな仕事をしているかも分からないしどんな相手と結婚するのかも分からないからか、何を想像しても実感が掴めない。
(紀子ってことも有るんだぞ。 吉江だってことも有り得るんだぞ。) クラスメートの顔を思い描いてみる。
しかし、どれもこれも合わないような気がして俺は窓を開けた。
夜の空気はひんやりしている。 昼間とはどっか違う気がする。
確かにうるさい連中が誰も居ないのだからそう感じても不思議じゃないな。
律子だって今は部屋に籠ってるはず。 こんな夜に出歩くやつも居ないだろう。
ふとスマホが鳴った。 (誰だろう?)と思って覗いたらラインだった。
「しょうがないな。 こんなのを送り付けてきて、、、。」 たまに居る。
何だか分からないのにメッセージを送ってくるやつ。 ただただうざいだけ。
それもさあ、無視してると勝手に怒りだすんだよなあ。 「送ってやってんのに見向きもしないのか?」って。
怒りたいなら勝手に怒ってくれよ。 俺は関係無いから。
ぼんやりしていると雨が降ってきた。 「雨って予報だったっけ?」
慌てて窓を閉める。 気付いたら母さんたちも静かになったみたいだ。
「まだ風呂に入ってなかったな。 入ってこようか。」 もう10時を過ぎている。
我が家では風呂を沸かしても特に急かされることも無い。 呑気だよなあ。
「冷めてたら沸かしてね。」って母さんに言われるくらいのもんだ。 それで服を脱いで風呂に入る。
姉ちゃんはまだまだ旅行から帰ってこない。 なんせ昨日行ったばかりなんだから。
今回は大阪と京都を回ってくるって言ってたな。 新人さんを連れてガイド研修をやるんだって。
旅行会社に就職したって聞いた時は驚いたよ。 まさか入れるとは思ってなかったから。
それと同じくらいに美和先生に会った時も驚いたんだ。 母さんの友達だとは聞いてるけど、、、。
そういえばさあ、母さんと楽しそうに話してたなあ。 俺は緊張しっぱなしだったよ。
だって算数が算数がって言うんだもん。 自慢じゃないけど二次方程式がやっと分かってきたところなんだから横でゴチャゴチャ言わないでほしいなあ。
さてさて夜通し降り続いた雨は朝になっても降り続いてます。 傘をさして歩くのってけっこう面倒。
油断するとさあ「何 水を飛ばしてるんだ!」って怒り出すおじさんが居たりするから。 関係無いだろう?
朝の駅に猛ダッシュ。 水溜まりを跳ねても文句は言わせない。
今日はオリエンテーション。 部活だとか教科書だとかゴチャゴチャした話がずっと続く。 うざいなあ。
そんなわけで電車を降りると律子たちも改札を出ようとしている所だった。 「おはよう!」
「あらあら弘明君 元気いいねえ。」 「おはようって言ってるだろう?」
「ああ、おはよう。」 「何だよ、ああって、、、。」
「気にしない気にしない。」 「一休みじゃないんだから、、、。」
「なあに? 一休みって?」 「律子 一休さんだよ。」
「そっか。 一休さんか。 つまんないの。」 「また始まった。」
相変わらず賑やかに話し続ける律子たちと一緒にバス通りを歩いていく。 行き過ぎる車が水を跳ねていく。
「きたねえもんだなあ。 考えてくれよ。」 「考えろって言ったって誰も考えないわよ。 車に乗ってたら濡れないんだから。」
「それはそうかもしれんけど、これじゃああんまりだぜ。」 バシャバシャと大型車が水溜まりを跳ねていく。
「けっこう降ったのねえ。」 「何感心してるのよ?」
「うち、マンションだからさあ気付かなくて。」 「え? お前んちマンションだったの?」
「今頃気付いたの? 遅過ぎ。」 「いいよ。 お前んちなんて興味も無いから。」
「ひどーーーい。 レディーの家に興味も無いなんて。」 「どっかの週刊誌じゃあるまいに。」
「やあ、おはよう!」 バス組の良太が走ってきた。
「そんなに走らなくても逃げないわよ。」 「え? プロポーズしたら逃げたじゃん。」
「あのねえ、あんたみたいな宇宙人にプロポーズされても嬉しくないのよねえ。」 「宇宙人? 俺が?」
「そうそう。 整形をやり直して出直しなさい。」 「お互い様だろう?」
「うわ、弘明君まで、、、。」 「また始まった。」
そんなわけで今日も賑やかな一日が始まるんだ。 ああ、憂鬱。



