俺の彼女は高校教師

 電車に乗って何をしているのかと香澄を見てみたら、、、。 (あの野郎、ゲームに嵌ってら、、、。)
無視すると大魔王みたいに角を生やすのに電車に乗ったらこれなんだもんなあ。 付き合い切れねえよ。
まあ、これ以上付き合う気は無いんだけどさあ。 就職してからもこうだったら付き合ってられないからなあ。
 「やった。 勝ったぞ。」 今日はダイヤモンドゲームをやってるみたい。
まったくもう、あれくらい勉強も頑張ってほしいよなあ。 せっかくの魚屋なんだから。
 次は香澄が降りる駅だ。 でも本人はまだ気付いてない。
「おい、次だぞ。」 「分かってる分ってる。」
そう言いながら画面と睨めっこをしておりますねえ。 俺は黙って後ろの車両へ移ることにした。
 そこから様子を見ているとまったく降りる気配は無い。 そのまま香澄はゲームを続けております。
やがて走り出したのに気付いた香澄は辺りを見回しておりますが、、、。 泣きそうな顔で窓に目をやりました。
 しばらくして音を立てないように隣に座ってやる。 「弘明君、何で教えてくれないのよ?」
窓に向かって文句を言う香澄を見ながらクスクス笑っていると、、、。 「意地悪。 泊めてもらうからね。」
「お前がゲームに熱中し過ぎるから悪いんだよ。」 「違うんだもん。 教えてくれない弘明君が悪いんだもん。」
「教えたでしょうがよ。」 「いつ? 何処で? どんなふうに? 誰が? 誰に?」
「あのなあ、こんな所でクイズをやってる場合かってんだ。」 「兎にも角にも弘明君が悪いのよ。 泊めてもらうからね。」
 そこへスマホが鳴った。 「なあに?」
「お前、降りなかったなあ。 前で待ってたんだけど、、、。」
「やばーーーーい。 お父さんと約束してたんだったあ。 次で降りるから。」 「分かった。 そっちに行くから降りるんだぞ。」
 『お嬢様も大変ですなあ。 お父様とどちらへ?」 「今日はお父さんの誕生日だからお祝いすることになってたの。 やっちゃったあ。」
「じゃあ、うちには来ないんだな? 助かったわ。」 「何よ? そのうちに申し込みに行きますからね。」
「あっそう。 まあ頑張ってよ。」 「冷たいなあ。」
「それが分かってて好きなんだろう? 物好きなんだから。」 とか言いながら駅を降りるとお父さんが迎えに来ていた。
「弘明君 香澄をこれからもよろしくな。」 「は、はあ。」
 駅前でよろしくなって言われても困るんだけどなあ。 場所と時間と雰囲気を考えてくれよ。
ブツブツ言いながらいつもの道を歩く。 いつもと変わらないこの道、、、。
 供養塔が見えた時、俺は(おや?」と思った。 何かが光ったように見えたからだ。
でもまあいいか。 あそこは墓地なんだもん。 いろんなことが有るさなあ。
 家に帰ってくると母ちゃんはまだまだ帰ってないらしい。 冷蔵庫に入れておいた三ツ矢サイダーをググっと飲み込んで部屋に上がる。
「ハーーーーア、今日も一日疲れたなあ。」 背伸びをして寝転がるとメールが来た。

 『弘明君さあ、焼き肉は好きかな?』

 美和からのメールだ。 「焼肉か、、、。」

 『もちろん好きだよ。 美和の部屋でやるの?』

 「今度の日曜日はそうしようかと思ってる。 夢雨ちゃんも好きなんだって言うからさあ。』

 (またあの子が来るのかよ? まあいいか。 嫌うわけにもいかないし結婚なんてしたらそれこそ親戚になるんだからな。)

 『オケオケ。』

 『なあに? 変な返事。( ´艸`)』

 (だからさあ、変な文字使わないでよ。 読めないじゃん。) 解読に苦労するメールって嫌だなあ。

 『変なメール?』

 『オケオケって。』

 『ああそれね。 オッケーオッケーってことだよ。』

 『なあんだ。深い意味は無かったのか。』

 どういう意味なんだろうなあ? 分からんやつだわ。
ゴロゴロしていると「ご飯よーーーーーー!」っていう声が聞こえた。 (やっと帰ってきたか。)
食堂に入ると父さんも帰ってきてて美味そうにビールを飲んでいる。 「選挙はどんな具合だ?」
「いつものことだからねえ。 たぶん無投票で決まるんじゃないの?」 「また無投票か。」
 ここ数回、ずっと無投票なんだよな。 選挙カーが走っているのを見たことが無い。
やってるほうにはいいかもしれないけど、ほんとにこれでいいのかなあ? 何か違うような気がするけど、、、。
 俺は最近の香澄のことを考えながら飯を食ってます。 何とも言えないんだよなあ あいつ。
どうもさあ、うちに泊まって上に乗っかって以来、気になってしょうがないんだよ。 あれ以来、余計にくっ付いてるような気もするし。
 冴えない顔で飯を食っていると姉ちゃんが耳打ちしてきた。 「また何か有ったの?」
その時は何とかごまかしたけど部屋に戻っていると姉ちゃんが部屋に入ってきた。
「あんたさあ、また何か有ったんでしょう?」 「何にも無いけど。」
「だったらあんな冴えない顔はしないよねえ?」 (ギク、、、。)
「またどうせ香澄ちゃんなんでしょう? あんたが何か有る時っていっつもそうよねえ?」 見上げるような顔で言うもんだから思わず頷いてしまった。
 「今度は何なのよ?」 「こないださあ、泊まりに来たじゃん。」
「あの時も何かやったの?」 「寝てたら上に乗ってきたんだよ。」
「まあまあ、おませな子ねえ。 それであんたはどうしたの?」 「なんとか下ろしたんだけどさあ、、、。」
「あらあら下ろしちゃったの? もったいなーーーーーーーーい。」 「何がだよ?」
「決めるチャンスだったじゃない。」 「でも俺は、、、。」
「そっか。 あんたは美和だもんね。 フフフ。」 「それから香澄がずーーーーーーっとくっ付いてくるんだ。」
「今のうちだけよ。 社会に出ちゃえばあんたよりいい男は山と居るんだから。」 「そうかもしれないけどさあ、、、。」
「心配だったら今のうちに捕まえることね。 そうでもなかったらそのままほっときなさい。」 姉ちゃんは微笑して部屋を出て行った。
 その後、のんびりと風呂に入っていると、、、。 ガラガラっとサッシが開いた。
見ると姉ちゃんが少し恥ずかしそうな顔で入ってきた。 「どうしたの?」
「心配だからもっと話を聞きたいなと思って。」 そう言って俺の隣に体を沈めてくる。
「美和ともたまにはこうしてくっ付いてるんでしょう?」 「そりゃまあ、、、。」
「美和はね、見掛けより優しい人だから大事にしてあげてね。 あの子はね、尽くしたがる人なのよ。」 「そうなの?」
「前の彼氏とはうまくいかなかったんだ。 我が儘な人だったらしくて。」 「ふーん。」
 「あんたさあ、こないだ美和のマンションに行ってたでしょう?」 「何で知ってるの?」
「あの山道を越えた所に私の会社が有るのよ。 だからあのマンションもよく見えるの。」 「そうなんだ。」
 衝撃だった。 姉ちゃんが俺と美和のことを知ってるなんて、、、。
でも半分はそれでホッとしたかもしれないな。 「香澄ちゃんはどうなの?」
「相変わらずあれやこれやと噛み付いてくるんだよ。」 「まあ今だけね。 学生だから許されてるようなもんよ。」
「今日も大変だったんだ。」 「まあ、せいぜい可愛がってやりなさい。 今の本気はそう続かないから。」
 そう言うと姉ちゃんは浴槽を出て体を洗い始めた。 何気に目を開いた俺は真っ赤になってしまった。
「何、赤くなってるのよ?」 「だって目の前で洗ってるから。」
「いいじゃない。 狭いんだからしょうがないわよ。」 「それはそうだけど、、、。」
「見たくなかったら見なくてもいいのよ。 後で美和に見せてもらえばいいんだからさあ。」 「そんなこと言ったって、、、。」
 壁のほうを向いたまではいいけれど、同時にあの透け透けの美和を思い出してしまった。 「何 ニヤニヤしてるの?」
(ギク、気付かれた。) 「さては美和といいことしたな?」
「してないしてない。」 「ほんとかなあ? 顔がにやけてるぞ。」
(やべえ、逃げられねえぞ。) 「吐いちゃいなさい。 誰にも言わないから。」
 そんなわけであの透け透け事件を喋っちまったんだ。 「それだけ?」
「いや、その前にはさあビキニを着て出てきたんだ。」 「本気なのね。 美和も。」
「本気?」 「そう。 一瞬で本気になっちゃったのよ。」
「それで見せたくなるのかなあ?」 「たぶん弘明に体を任せたいって思ってるんだわ。 大事にしなさい。 そんな人は滅多に現れないから。」
「そうだね。」 何だか俺は大きな責任を背負わされたような気がした。