俺の彼女は高校教師

 「何打? 泊まりに来たのか?」 「は、はい。」
「お母さんたちは何も言ってないだろうなあ?」 「大丈夫です。 弘明君だから。」
「弘明はいいなあ。 こんな彼女が居て。」 「どうかなあ?」
「え? 何よそれ?」 「だって、、、。」
 「まあいいじゃん。 香澄ちゃんでも可愛がってやるんだな。」 父さんはそう言うとビールを飲み始めた。
(何か嫌な夜だなあ。) そこへ電話が、、、。
 「ああ、お母さんですか? 香澄ちゃんならみんなで夕食を食べてるところですよ。 ええ。 そうです。 弘明も喜んでるみたいだから。」 「誰が喜んでるんだよ? まったく、、、。」
「そんなこと言わないの。」 香澄が箸で刺してきた。
(面倒な夜だぜ まったく。) 俺がそう思っていると母さんが風呂を勧めてきた。
「香澄ちゃんも入ってね。」 「はーーーーい。」
(あの野郎、このまんまうちの子供になる気だぜ。) 「弘明も入るんだよ。」
「分かってるよ。」 「でも今はダメ。 香澄ちゃんが入るから。」
「はいはい。」 どうもこの空気が嫌で俺は自分の部屋に戻った。
 スマホを開いてみると美和からメールが来ている。 「こんなのを香澄に見付けられたらうるさいよなあ。 たぶん。」

 『弘明君 今度の日曜日にさあ、私の部屋に来ない?
ゆっくり話したいの。』

 『それはいいけど周りにはぜーーーーーーったいに内緒だよ。 うるさいから。 特に香澄が。』

 『分かってるわよ。 あの子は一途な人だからね。』

 『でさあ、何時に何処で待ち合わせればいい?』

 『メールだと見られちゃうから明日の昼に図書館で話しましょう。』

 (こんなことやってていいのかなあ? 俺たち。) まあ生徒と教師の恋愛なんて時々は聞くことだけどさあ、、、。
生徒指導部の先生が指導しながら好きになっちゃう話だって有るんだからさあ。 それに『高校教師』って映画が有ったっしょ?
 音楽室で仲良くやってた先生も居るんだし、、、。 でも美和は、、、。

 「弘明君 お風呂どうぞ。」 そこに香澄が入ってきた。
「ワオ、脅かすなよ。」 「ごめんごめん。 取り込み中だったのね?」
「何だよ?」 「またまた律子といい話をしてたんでしょう?」
「何で律子なんだよ?」 「電話が掛かってくるくらいだもん。 仲いいわよねえ?」
「まあ、お前よりはな。」 「ひどーーーーい。 泣いちゃうんだから。」
「母ちゃんが聞いてたらどうするんだよ?」 「いいもん。 聞いてもらうんだもん。」
「聞いてたわよ。 香澄ちゃん。」 「ワワワ、、、。」
「あんまり弘明を困らせないでね。 泊ってもいいから。」 「すいません。」
こういう時だけはしおらしくするんだよなあ、こいつ。 「いいじゃんいいじゃん。 お風呂入ってきてよ。」
 俺は半分心配しながら風呂に飛び込んだ。 香澄はというとスマホでゲームを始めたらしい。
30分ほどして部屋に戻ってくると香澄はゲームの真っ最中。 その姿を見ながら俺は布団の中に。
 んでもって寝ようとしていたら香澄が潜り込んできた。 「危ないやつだなあ。」
「いいじゃない。 こうして朝まで弘明君と居られるんだから。」
「あっそう。」 「冷たいなあ。 喜んでよ。」
「大騒ぎするとまた母ちゃんが飛んでくるぞ。」 「見ちゃったわよ。 仲いいのねえ?」
「ワワワ、、、、。」 焦っている香澄を見ながら姉ちゃんは部屋に戻っていった。
 「弘明君のせいでお姉さんにも見られたじゃないのよ。 どうしてくれるの?」 「お前が勝手にくっ付いといてそれはねえだろう? お嬢様。」
「いいもん。 明日学校で言い触らしてやるんだもん。」 「ご苦労様です。」
「何よ? 冷たいなあ。」 「お休みなさいませ。」
 香澄はまだまだブツブツ言っているけれどそんなのに相手してたら寝れなくなっちまうぜ。 美和のことだって有るんだし。

 そんな真夜中のこと。 俺は大きな物に押しつぶされる夢を見ていた。
「何打これ? 重た過ぎて動かせねえじゃないか。」 バタバタしながらその物体を跳ねのけようとしているのだが、、、。
 動いていたら目が覚めてびっくり。 俺の上に香澄が載っていた。
「こいつ、重たいなあ。 何考えてるんだよ?」 何とか香澄を下ろしたまではいいけれどさっきまでの感触が残っていて気になってしょうがない。
(寝れなくなりそうだな。 まいったぜ。) そのままで俺は朝を迎えたのでありました。

 翌朝は眠くて眠くてしょうがない。 欠伸ばかりしていると香澄が睨んできた。
「またいいことしてたんでしょう?」 「馬鹿だなあ。 俺の上に乗っかっておいて。」
「嘘でしょう? そんなことしないもん。」 「冗談じゃねえよ。 あんな重たい体を載せといて。」
「失礼ねえ。 彼女に重たいなんて。」 「まあまあ、仲いいのは分かるけどあんまり問題起こさないでね。」
「ほら言われた。」 「弘明君のことよ。」
「何で俺なんだよ?」 「いいからいいから。 学校遅れちゃうよ。」
「ああ待て! 財布も定期も置いてくのか?」 「やだやだ。 持ってきてよ!」
「しょうがねえお嬢様だなあ。 人使い粗すぎるだろう。」 「あなたは奴隷ですから。」
「へえ。 その奴隷の彼女なのね? じゃあ奴隷以下じゃないか。」
「ワワワワワ、それはまずい。」 「しゃあねえなあ。 ほら定期。」
「ありがと。」 んでもって香澄は下りホームに行くのでありましたよ。
「馬鹿! そっちじゃねえよ。 こっちだっての。」 「ごめんごめん。 慣れてなくて。」
「お前だって電車で通学してるんだろう? ちっとは覚えたらどうだ?」 「私さあ頭悪いから。」
「それでよく高校生になられましたことねえ。 オホホ。」 「きしょいなあ。」
 朝の電車はしこたま混んでおりまして俺も香澄も圧し潰されてる感じ。 はーーあ、なんとかしてくれ。
 「こうしてると幸せだなあ。」 「何寝ぼけてるんだよ?」
「寝ぼけてないもん。 起きてるもん。」 「こんなのと一緒に乗ってたら頭おかしくなりそうだぜ。」
「元からおかしいじゃない。」 「お前よりはましだけど。」
「へえ、そうなんだ? 彼女を上に載せておいて?」 「お前が勝手に乗ってたんだろうがよ。」
「証拠は有るのかなあ? 証拠 証拠。」 「うるさいなあ。 自分が寝てたからって騒ぐなよ 馬鹿。」
「うわ、また私を馬鹿にした。 許さないんだからねえ。」 「いいよ。 永久に許されなくても。」
「いいんだな? 言ったなあ?」 「おはよう。 朝から元気いいわねえ。」
 そこへいつの間にか律子が加わっていた。 「ワワワワワ、りっちゃん おはよう。」
「何を慌ててるのかなあ? 香澄ちゃん?」 「何でもない。 何でもない。」
「さっきさあ、弘明君を許さないとか何とかって聞こえたんだけど何だったの?」 「何でもないんだってば。」
 「こいつさあ、俺の家に泊って俺に、、、。」 「ワワワワワ、言っちゃダメーーーーーーー。」
「また何か良からぬことを企んだのね? そうなんでしょう? ねえ香澄ちゃん?」 「いやいやだから、、、。」
 「お二人さん 降りないのかなあ? 駅に着いたんだけど。」 「やばいやばい。 乗り越したらえらいことになるわーーーー。」
さっきまで睨み合っていた二人は俺の顔も見ないまま改札口へすっ飛んで行った。 「あれだからなあ、お嬢様は。」
 駅を出ると今度は二人並んで楽しそうに話してる。 何だい こいつらは?