俺の彼女は高校教師

 今日も一日この調子なのかなあ? 先が思いやられそうだな。
昼になり、いつものように弁当を掻き込んでから図書館へ、、、。 と思ったら2年の久保山佐代子が話しかけてきた。
 こいつは久保山先生の娘さん。 でかくなったなあ。
「何で部活やらないんですか?」 「いきなりの詰問かよ。」
「何でなんですか?」 「やりたくないから。」
「それだけ?」 「そうだよ。」
「何か有るんじゃないんですか?」 「何もねえよ。 じゃあな。」
 何とか振り切って図書館へ、、、。 すると美和が先に来ていて本を読んでいた。
俺はというと美和の邪魔にならないように隅っこに落ち着いて本を読むことにしたのだが、、、。
 「こっちにおいでよ。」 美和が誘うもんだからついつい、、、。
お隣に座って本を広げた。 「今度の日曜日さあ、うちに来ない?」
「美和の家に?」 「うん。」
「いいの?」 「いいわよ。 ここしばらく、ずっと無視してたからさあ、、、。」
「何で?」 「周りに覚られたくないのよ。 仲良くしてることを。」
「そっか。 でもさ、周りじゃあ「高橋先生に振られちまったねえ。」って言ってるやつが多いんだ。」 「いいじゃない。 言わせておけば。」
「でも俺は堪ったもんじゃないよ。」 「純粋なのねえ。」
「そうなのかなあ?」 「いいじゃない。 何か言ってても今だけなんだから。」
 不思議と今日は話が弾む。 これまでずいぶんと気を使わされたのに、、、。
珍しく誰も来ない。 美和を独り占めしている気になってきた。
 そっと手を握ってみる。 「なあに?」
「こうしてみたくてさ、、、。」 「そうなの?」
「うん。 こないだも手は握れなかったから。」 「そっか。」
 ハンドルを握っている美和の横顔を思い出してみる。 まるでレーサーにでもなりそうな、、、。
「今度来たらどうしようかなあ?」 「何か有るの?」
「別に無いけどさあ、弘明君だけだから、、、。」 「他に呼んだやつは居ないの?」
「大学時代に付き合ってた人も居たけどどうも誘う気になれなくて、、、。」 「何で?」
「すごーーーくインテリだったのよ。 学者みたいな感じで。 ああいうタイプの男の人は嫌いだから。」 「それで俺を?」
「なんかさあ弘明君ってワイルドな雰囲気だから憧れちゃって、、、。」 「ワイルドだろう?」
「全然似てないわよ。 研究しなさい。」 「やられた。」
 どうもこうも無く今日は平和な時間である。 司書室も静かだ。
知らない間に腕が触れ合っているのに気付いた俺はそっと離れようとした。 「あったかいわねえ。 くっ付いててもいいのよ。」
耳元で囁くもんだからくすぐったいのなんの、、、。 でもまあいいか。
 まだまだ4月。 やっとゴールデンウィークが近付いてきたところ。
世間ではgwの過ごし方が全国紙的なニュースになっているようですが、、、。 もちろん旅行やなんかをする予定も無い。
 母さんたちもいつもの通りだし別にこれといって変わったことも無い。 そんな時に美和が部屋に誘ってくれるって言うんだ。
「今度はさあ、弘明君は表の玄関から入ってね。」 「何で?」
「一応、管理人に睨まれないようにしないとさあ、あそこの管理人はうるさいのよ。」
「そっか。 こないだは駐車場から入ったからね。」 「そうなの。 初めてなのに駐車場から入ってもらったからさあ、、、。」
 分かる気がする。 最近はオートロックでも完全に安全とは言えなくなってるから。
付きまとわれてロックを解除した瞬間に殺されたんじゃあ浮かばれないよなあ。 そろそろ昼休みも終わりかな?
 掃除当番が入ってきた。 「じゃあ行くね。」
「そうだそうだ。 私も行かなきゃ、、、。」 美和も慌てて椅子を立った。
 久しぶりだったな。 邪魔が入らずにのんびり話せたのは、、、。
でもさあ、ドキドキしたよね。 太ももまでくっ付いちゃってさあ。
吉原たちだったらやってるかなあ? 大問題だわ。
 でもなんか美和って話せば話すほど可愛く見えてくるんだ。 何故なんだろう?
香澄と喧嘩してるからかなあ? それとも?
 教室に戻ってくると香澄がモップを持って走り回っていた。 「弘明君もお掃除するのよーーーー。」
「俺を掃き出すのか?」 「掃きたいわねえ。 意地悪ばかりするんだから。」
香澄はモップを持って俺に迫ってきた。 「お嬢様はトイレ掃除ではなかったのかな?」
「あれは放課後の話だから。」 「そうか。 じゃあ一緒には帰れないのね?」
「帰りたかった?」 「そうだねえ。 徹底的に虐めたかったなあ。」
「今だって十分よ。」 「まだまだ足りないだろう?」
「エヘヘ、分かった?」 「やっぱりな。」
「何よ? やっぱりって?」 「お前はドドドドドドドドドドmだからなあ。」
「えーーーー? 香澄ちゃんってmだったの?」 「今頃気付いた?」
「分かんなかったわ。」 「妙子 鈍過ぎ。」
「そうなのか。 mなのか。」 不思議な世界だなあ、今日はどっか違うぞ。
 5時間目は国語である。 眠たい眠たい国語である。
それでも無理して目を開けて教科書を睨みつけております。 それでもやっぱ眠いわ。
 欠伸をしていたら出席簿が飛んできた。 「あう、、、。」
それを見て香澄がクスクス笑っている。 (あの野郎、とっちめてやるぞ。)
 授業が終わると空かさず俺に食い込んできた。 「さっきさあ、寝てたでしょう?」
「ギリギリ寝てねえよ。」 「寝てなかったらやられないでしょう?」
「寝てねえってば。」 「ほらほら言い訳してる。 寝てたんでしょう?」
「うっせえなあ。 自分が寝てないからって威張るなよ。 馬鹿。」 「うわ、また私を馬鹿にした。」
「馬鹿じゃなかったら何なんだよ?」 「私はおりこうさんなの。」
「はいはい。 そうですねえ。 口元に何か付いてるぞ。」 「え?」
香澄は慌てて鏡を取り出した。 「嫌だあ。 海苔がくっ付いてるーーーーー。」
「気付かなかったのか? 馬鹿だなあ。」 「そんなに馬鹿馬鹿言わないでよ。」
「お前だって俺に馬鹿馬鹿言ってるだろう?」 「謝るから言わないで。」
「3回回ってチンって言ったら許してやる。」 そしたらほんとに3回回って「チン。」って言ったからびっくり。
 唖然としている俺の前を澄ました顔で通り過ぎていった。 「次は音楽だからね。」

 そしてそして香澄がトイレ掃除をする放課後になりました。 ホームルームが終わると香澄は1階のトイレへ、、、。
律子もさやかもそんな香澄を気の毒そうに見送ってから昇降口に出てきた。 「弘明君、香澄ちゃん ほっといてもいいの?」
「何でもないから。」 「ふーん、そうなんだ。 冷たいなあ。」
「お前たちこそ香澄を置いて帰るのか?」 「関係無いから。」
「冷たいやつらだなあ。 いっつもあれだけ絡んでおいて。」 「香澄は暴走するからたまにはこういうのも必要よね。」
「お嬢様ぶって大丈夫なのかねえ?」 「大丈夫大丈夫。 弘明君とは違うから。」
 俺のほうを向いたまま歩いて行く律子たちにどうも嫌な予感が、、、。 「キャーーーーー!」
何かと思って行ってみたら律子が側溝に嵌っていた。 「言わんこっちゃねえなあ。 ほらほら大丈夫か?」
右足を突っ込んだらしい律子は蒼くなって黙り込んでしまった。 「りっちゃんも気を付けなきゃね。」
そこへ養護教諭が飛んできた。 「あらあら、またやったのね? しょうがないなあ。」
おかげで律子は制服を汚したまま帰ることになったのだ。 可哀そうになあ。
 その頃、香澄はというとトイレ掃除の真っ最中。 「あーー、まだこんなに在るんだ。 疲れちゃうなあ。」
ブツブツ言いながら便器を洗っている。 俺はそんな香澄を探しに歩き回っていた。
 「女子トイレってこの流れだからなあ、、、。 ということはこの辺りかな?」 とはいえ中まで覗くわけにはいかない。
手洗い場でウロウロしていると香澄が出てきた。 「あれ? 弘明君も居残りなの?」
「違うよ。 お前が心配だから見に来たんだ。」 「心配してくれてたの? やっぱり弘明君だわ。」
「勘違いするなよ。 友達なんだから。」 「えーー? 彼女じゃないの?」
「こんなうるさくてやらかしてばっかの彼女なんか要りませんから。」 「ひどーい。 そこまで言うか。」
 文句を言いながら香澄は2階のトイレへ入っていった。