心の声を聞きたい王子様に応える私は変態ですか?

 穏やかな笑顔で頬をなでられ、軽くキスをされる。

 大好きな人。
 寿命を削って私の心を読みたい、私を大好きな王子様。彼が流れるような動作で指を鳴らし、同時にスゥッとあの執事が部屋へ入ってきた。

 ほんとに来ちゃったよ……。待って待って待って待って。この展開は、ちょっと……。

「大丈夫だ。存在感は消してもらう」

 執事の礼をすると彼は物音も立てずに声も出さずクローゼットの中に……って、あれ? なんかおかしくない? あのクローゼット、隙間が大きすぎない!?

 削ったんじゃない!?
 削ったでしょ!?

「ユリア、愛している」

 ま、待って。心を読むのはもう始まっているの!?

「そういえば、君はあの時に心の中でよく分からない単語を出していたな」
「へ?」
「こぼれ松葉、浜千鳥、菊一文字……」

 ギャー!

「そ、それはさすがにえっと、次回以降で……」
「まずは単語の意味から教えてくれ」

 ――どうしてか、私はこの質問によって完全に執事さんの存在を忘れた。

 今思えば、部屋に入る前から私の心は読まれていたのかもしれない。
 
 ★☆★
 
 セルバンティス・バルゾーラの治世は安定し、国に経済的繁栄と文化の発展をもたらした。その背景には、信用できる人物を見抜く力以外に、もう一つ大きな理由があるのではないかとまことしやかに囁かれている。

 彼はいつも愛妻ユリアと、青白い顔をした執事を伴っていた。その執事は、どうやら歳をとらなかったようだ。人間ではない者の力を借りていたのではと――。
 
 ★☆★ 
 
「セルバンティス様、言ってましたよね。あの執事さん、寿命の使いすぎであの世にいくのも早いから、クローゼットの中に隠れるくらい許してやってくれって。それで、何度も何度もその状態で夜を越しましたよね」
「ああ」
「確かに短命でしたけど、夢魔になってずっと側にいるじゃないですか!」
「夢魔に認めてもらえたからな。さすがあいつだ。しかも、私たちの寿命を消費することなく貢献してくれている。最高だな」
「死刑囚に、死刑の日を延期してやるから寿命を食わせろという交換条件を飲ませていますけどね……」
「仕方ないな。ここに留まるのにおやつは必要だ」

 セルバンティス様も夢魔になった執事もみんな頭がおかしい。ついでに言うなら、私の世話を焼いてくれるセシルもおかしい。

 でも、一番におかしいのは――。

「君がいるから、私は国王陛下としての仕事を頑張ろうという気になれる。あいつも君がいなければ夢魔になどならなかっただろう」

 彼の言葉に満たされる。

「君が築いているんだ。この国の平和を」

 ――全てを受け入れて幸せを感じてしまっている、私なのかもしれない。

 
〈完〉