──貴方に伝えたかった、たった一言。

「樋目野さん?次…貴方ですよ?」

先生の声でハッと立ち上がる。

急いで教卓まで歩き、顔を上げる。

「え…え~とぉ…樋目野 茜里です…趣味は…小説を読むこと…です。一年間…よろしく…お願いします…」

最悪なスタートダッシュだ……。

いや…ダッシュしようとして、ずっこけた後の最悪なスタートだ。

ここに来て趣味が小説?たしかに小説は好きだけど、それを自己紹介で言うのは違うんじゃないのか?

もう終わった事を心の中でぶつぶつ言いながらゆっくり席に戻り、頭を抱えた。

もう少しだけ時間があれば……と心の中でそう呟く。 

なんで他のみんなはすらすらと自己紹介ができるの?

私はそんな事を出来るような人じゃないの……。

「次、天野(あまの)」

「はい」

その声を聞いて顔を上げる。

天野くん?が黒板の前に立った。

隣の席の気になる男子だ!さっきあんな感じだったけど……。

でも自己紹介なら好きなことの一つや二つ聞けるんじゃないのか?

そう思うと、私の胸が高鳴った。

私は自分の失態を忘れるため、天野くんの自己紹介を聞いた。