小説の中の人を拾いました ─辺境領主のご落胤─


「いらっしゃいませ、本日はどのよ……ぐふぅっ」

アパレル女性店員が接客しようとして、顔面オーラにやられた。

いくつか店を回って、クリアランスセールの品々を買い漁る。
数さえあればいい。
正直、なにを着ても絵になる美男子。
衣服など彼にとってはしょせんただの添え物にすぎない。

「あっ、このひとだ!?」
「ほんとだすごーい!」

女子高生くらいの小娘2人がセルジュさまを遠巻きにスマホを向けた。

「ちょっと、アナタたち何をしてるの!?」

ホントは「何してくれてんのじゃこのボケカスがぁぁっ!」と怒鳴りたい。
だが、ここは世間体を気にして、大人な対応をみせる。

「ごめんなさい、SNSで上がってて」
「え……ちょっとそれ見せて!」

Oh!
こいつはアカン。
セルジュさまの画像や動画がSNSにアップされて反響を呼んでいる。
海外のスターや芸能人説。
とにかく普通じゃないと書き込みが増えていっている。

「セルジュさま、ここは危険です」
「うん? わかった。任せよう」

すぐに買い物を終わらせ、バスに乗る。
するとあきらかに後をつけている連中が何組かいる。

そこで、自宅の最寄りいくつか手前で降りた。
連中も降りたが、電話で予約しておいたタクシーに乗って追手をまいた。

ふう、とんでもないなセルジュさま。
芸能人でもないのにはやくも追っかけが現れるなんて……。