小説の中の人を拾いました ─辺境領主のご落胤─


ゴンッと額にぶつかると「ぐうぇ」と淑女にあるまじき声を上げてしまった。

まあ、痛いっちゃ痛いが、流れ星が当たった割にはぜんぜん平気。

おでこを両手で押さえながら、庭に落ちた隕石を見下ろす。

ぷしゅーっと白い煙が噴き出たかと思えば、全裸の男性がひざまずいていた。


いや、わかるよ?

登場の仕方がもうなんかの映画やん。などと非現実的な現実を突きつけられて思考が麻痺していたが、さらに私の脳を揺さぶってきた。


「せっセルジュさま!?」


白い肌。切れ長の目。女性よりも艶めかしい唇。

そしてなにより特徴的なその赤い髪。

紛れもないない私の王子さま。

ふだんガサツな私だが、「とぅんく!」と乙女な心臓が一音聞こえた。


「ここは?」

「ふぇ? ちょっ、あっ……」


全裸のセルジュさまは前を隠そうともせず、堂々と立ち上がってしまった。

それを見て頭に血が上ってしまい、屋根から足を踏み外してしまった。


ふぁさっ、と抱きとめられて庭に着地した。

って、たくましい胸板にくっついてるーーーっ!!


すっ、好き──

いやいや、今はそうじゃなくて。

マッ()のセルジュ様に抱かれるなんて、どんなご褒美なんだい?