小説の中の人を拾いました ─辺境領主のご落胤─


でも片思いの相手が主人公の物語は結末を迎えていない。


可憐な第1王女、聡明な侯爵令嬢、隣国の強烈なカリスマを放つ若き女王。

ふさわしい候補の女性はたくさんいる。

セルジュさまには幸せになってほしい。

でも、誰とも結ばれてほしくないという願望もある。


それにしても、作者はなぜ続きを書かないのだろう。

誰も読まないから?

それとも書くのに飽きたから?

いずれにしても、見ず知らずの素人の作品の2次創作したくなるほど、主人公にどハマりしている。


「はぁーーっ」


田舎に移り住んで3年。

平屋の一軒家の屋上で、きらめく星々をあおむけになって眺める。



ん? UFO? ──いや、流れ星か。

綺麗な白い尾を引いて、とんでもなくゆっくり流れている。

ふと我に返り、とっさに願い事を3回唱える。


「せるじゅせるじゅせるじゅ」


どうにか3回言えたが、なんだ「せるじゅ」って?

本当は作品を再開して欲しいと言いたかったが、無理だった。


流れ星はゆっくりと地平線の向こう側へ……消えない!?

ってか、私のところに向かってないかアレ?