小説の中の人を拾いました ─辺境領主のご落胤─


「いや、セルジュさまが良い男すぎて現実がつらい」


最新話まで読んでしまった南海は、盛大にため息をつく。

彼女の場合、最新話まで読んでしまうと続きがないという虚無感に襲われる。

そのため、最新話の数話前でいったん読むのをやめる。


そしてある程度、更新が進んだら読むのを再開するのである。

しかし!

この「辺境領主のご落胤」という作品。おもしろすぎて、あっという間に最新話に到達してしまった。

評価0、フォローも0。

なんだったら視聴数も私、南海祭(みなみまつり)しか読んでいない勘定になる。

嘘だろ?

こんな面白いのが眠っているなんて、WEB小説こえーっ。

更新が途絶えて1年は過ぎている。

このまま更新されなかったら、死んでも死にきれねー。

それにしても、辺境領主の落胤であるセルジュさまが良い男がすぎる。

領主の妾の子として、人知れず平民として生まれ育った主人公。

しかし、スペックが高すぎて、幼少期から目立つ、モテる、かわいい。

もうお姉さん、セルジュさまが実物だったら、いくらでも貢いじゃう!

しかし、現実はつらいことしか待っていない。

私もそろそろ売れる作品を書かなきゃアカンのだが……。

大学時代に気まぐれで書いた作品が、すごく売れてかなり稼いでしまった。

そのせいで自分に才能があると勘違いして、専業作家の道を選んでしまった。

だけどあれから3年。書けども書けども鳴かず飛ばずで、スランプに陥っているといって過言ではない。

そのため、インスピレーションを得るため、小説投稿サイトを読み漁る毎日を送っていた。

そして出会った運命の一作。