向日葵の園

足元に転がっている注射器を無我夢中で掴んだ。

これが向日葵化させてしまう薬でも鎮静剤でも
どっちだっていいからこれに賭けるしかない…!

背後から思いっきり憂さんの首筋に突き刺した。
強く握り締めた注射器のプランジャーをグッと押し込むと、
ほんの少しだけ残っていたオレンジ色の液体が
グシュッと憂さんの体内に吸い込まれる。

注射器は刺したまま。

首元を押さえてよろめく憂さんが
ギョロリと私を睨みつける。

構ってなんかいられない!

足がもつれそうになりながら走った。

鉄扉を押し開けて外に飛び出す。
どこまでも続きそうな地下室を走った。

別荘の床下だけじゃない。
敷地内ならどこまでも広がっているかもしれない。

早く…早く…………早くっ!

うまくいけば憂さんだって向日葵化してくれる。
理性を失ってくれれば…もっと、薬さえ手にいれることができれば…
みんなでここから抜け出せる…!

走って走って走って、半開きになっている鉄扉を見つけた。

実験室も鉄格子の部屋も薄暗かったのに
あそこからは光が漏れている。

その部屋に飛び込んで、鉄扉をしっかりと閉める。

鉄扉にもたれるようにして
ズルズルと地面にへたり込む。

ひんやりとした無機質なコンクリートの地面。

上がる息。
混乱の止まらない脳。

身体中がガタガタと震えて、
手放してしまいそうな正気を必死で保った。