向日葵の園

紙袋を引き剥がした時の、
血走った目玉を思い出した。

人間であるべき部分が、どこにも見出せない″向日葵″達を。

どれだけ社会から隔離されたとしても、
あるべき尊厳を失ってしまっていたとしても、
僅かな光に賭けたかった希望を思った。

憂さんの足元には、さっき鉄格子の人に打った注射器が転がっている。

中にはほんの少しだけ、
鮮やかなオレンジ色の液体が残っている。

鉄格子の中にはいくつもの人間の体が折り重なっている。
まだ投薬される前の、人間としての脳も、血液も通っていた人達が。

″向日葵″になることにすら選ばれずに″雑草″として消えていった命。

あぁ…。

もしも憂さんが言うように、
ココにほんの少しだけ″希望のシンボル″が残されているのなら。

それは…。

鉄格子の扉を開けて、最後の投薬と、鎮静剤を打たれた人を憂さんが引きずり出す。
グッタリと脱力して、とろりと溶けていきそうな皮膚に
なんの躊躇もなく憂さんは触れる。

銃は彼の白衣のポケットの中。

憂さんは強い。
都を抱えて崖を登り切る体力があるくらいだ。
私の力では到底叶わない。

僅かに残された救い…。

私に背を向けたまま台車に治験者を乗せる作業をしている憂さんは無防備だった。