憂さんはいつも私に優しかった。
私にだけじゃない。
誰にでも平等に優しかったし、
こんな風に体を強く掴まれたことなんてない。
ベッドから無理矢理下ろされて、
引きずられるようにして部屋…実験室から連れ出された。
地下の部屋の扉はどれも重たそうな鉄扉だった。
実験室から三つ隣の鉄扉を憂さんが押し開けた。
同じように薄暗くて、
実験室よりもジメジメとしていてカビ臭い。
もっと殺風景なのにそう見えないのは、
唯一設置されている二つの鉄格子と、
その中で何人もの人間が蠢いているからだ。
「な……にコレ……」
「まだいくらか言葉を話せるもんだから厄介だよね。うるさくてかなわないよ」
「この人達…まさか」
「さっき話したでしょ。SNSで募った治験者だよ。みーんな現実世界に絶望した人達。夫に不倫された妻、逆もまた然り。大学受験に三度も失敗している浪人生、ワケあって普通の恋愛経験が無い人とか、理由は様々だけど。ほとんどは″人間″に絶望した人達だね」
奇声を発したり鉄格子をガリガリと引っ掻いて爪は血だらけになってしまっていたり。
理性さえも手放せていない人は「ここから出して」と涙ながらに訴え続けている。
ここから出してもらえないのなら
一刻も早く投薬されたほうがどんなにラクになれるのだろう…。
″間違った希望″の液体が、
憂さんが握っている注射器の中で揺れている。
鮮やかなオレンジ色。
希望のシンボルの色…。
私にだけじゃない。
誰にでも平等に優しかったし、
こんな風に体を強く掴まれたことなんてない。
ベッドから無理矢理下ろされて、
引きずられるようにして部屋…実験室から連れ出された。
地下の部屋の扉はどれも重たそうな鉄扉だった。
実験室から三つ隣の鉄扉を憂さんが押し開けた。
同じように薄暗くて、
実験室よりもジメジメとしていてカビ臭い。
もっと殺風景なのにそう見えないのは、
唯一設置されている二つの鉄格子と、
その中で何人もの人間が蠢いているからだ。
「な……にコレ……」
「まだいくらか言葉を話せるもんだから厄介だよね。うるさくてかなわないよ」
「この人達…まさか」
「さっき話したでしょ。SNSで募った治験者だよ。みーんな現実世界に絶望した人達。夫に不倫された妻、逆もまた然り。大学受験に三度も失敗している浪人生、ワケあって普通の恋愛経験が無い人とか、理由は様々だけど。ほとんどは″人間″に絶望した人達だね」
奇声を発したり鉄格子をガリガリと引っ掻いて爪は血だらけになってしまっていたり。
理性さえも手放せていない人は「ここから出して」と涙ながらに訴え続けている。
ここから出してもらえないのなら
一刻も早く投薬されたほうがどんなにラクになれるのだろう…。
″間違った希望″の液体が、
憂さんが握っている注射器の中で揺れている。
鮮やかなオレンジ色。
希望のシンボルの色…。



