向日葵の園

「ヒマワリちゃんも今日は疲れたんじゃない?そろそろ戻ろう。日和が心配する」

「憂さん。この有刺鉄線はなんですか?向日葵の園に似つかわしくないです」

「…あぁ。ほら、ここ結構山奥だろ?時々ね、出るんだよ。熊が。向日葵のほうには入っていけないように対策したって聞いたことがあるよ」

「熊なんか出たら人間が襲われちゃうかもしれないのに。それよりも向日葵のほうを守るんですね」

「俺の祖父か誰かも相当な植物好きだったんじゃない?」

憂さんが笑って、別荘のほうへと歩き出す。
私も大人しくついていく。

明日、明るくなったらもう一度見に来よう。
夜の向日葵の園はちょっと怖くて苦手かもしれない。

やっぱり向日葵には太陽がよく似合う。

「今、揺れませんでした?」

別荘の玄関口。
靴を脱いでいると足元がズズッて揺れる感覚がした。

ここは間違いなく一階だ。
だとすると…。

「地震…?」

「いや…俺は何も感じなかったけど」

確かに、あの一瞬だけで今はもう何も感じない。

「勘違い…ですかね」

「もしかしたら遠くのほうで地震があって、ちょっとだけ揺れたのかも。ヒマワリちゃんはきっと敏感なんだよ」

「そうなのかもです。じゃあ私、シャワー浴びて寝ますね」

「うん。日和に伝えとく」

「おやすみなさい」