向日葵の園

「ゆ…うさん…?」

「ごめん、驚かせちゃったね」

「本当に…びっくりしたぁ…」

「ごめんね。窓からきみの姿が見えたから。危ないのに何やってるのかなって」

「勝手にごめんなさい。こんなに立派な向日葵の園、昼間でもなかなか見る機会ないから。夜の表情も見てみたいなって思って」

「″向日葵の園″か。いいね」

「もう″畑″ってレベルじゃないから」

「そうだね」

「誰が管理してるんですか?施錠だってしに来なかったのに」

「さぁねぇ。自然の力、かな」

「いくらなんでも…肥料とか」

「人間の知識と自然の力を競ってもさ、絶対に人間が負けると思うよ。俺達には到底計り知れないパワーを秘めているからね」

「それはそうかもしれないけど。そう言えば憂さん、どこに居たんですか?」

「ちょっと疲れちゃったみたいでね。寝ちゃってたよ」

「やっぱりそうでしたか」

風が吹いて、サワサワと向日葵の葉が擦れる音がする。
山から聴こえてくる虫の羽音。
それはとても幻想的な夜だった。

風に乗って、憂さんからは微かにアルコールみたいな匂いがした。
綴がよっぽど力を入れて、掃除中に除菌でもした残り香だろうか。