向日葵の園

時間制限を設けられても守る自信はないけれど
とにかく許可が下りたんだしオッケー!

「ひま、アイス食べないの?」

「明日食べるー」

持ってきていたビーチサンダルを履いて、
私は一人で外に出た。

明るい時とは違って、
夜の山は不気味だ。

お姉ちゃんに言われなくったって絶対に柵以上のところに行く勇気は無い。

向日葵の園に近づいていくと、
都が言っていた有刺鉄線が確かにくっきりと見えてくる。

錆びた、濃い茶色で、下のほうをスッと指でなぞったら
汚れた粉みたいなのが指の腹に付着した。

だいぶ古いのか、雨晒しだしすぐにこうなってしまうのか。

有刺鉄線を越えることはできないから
それよりも数メートル先にある向日葵の園にはこれ以上近づけない。

遠くからだと割りと先のほうまで見えていたけれど
対象物が近くなるほどに、肉眼には収まりきれなくなって、
今は前列のほうに並んでいる一部の向日葵が夜の中でぼんやりと見えるだけだった。

「ヒマワリちゃん?」

「…っ!?」

突然背後から声をかけられて、
シチュエーションも相まって、ビクッと肩が揺れる。

心臓がバクバク鳴って、ちょっと痛いくらいだった。