向日葵の園

「こんな向日葵畑、初めて見たよね」

綴が寝転んでいたソファから腰を上げて
窓に近づいた。

山奥だし、虫が入ってきそうで怖いから窓は閉めたまま。

放置していたからってライフラインまでは断ち切っていないらしく
電気、ガス、水道は普通に通っている。
各客室のエアコンも問題なく使えるみたいで助かった。

「もはや園だよね。私も初めてだよ。こんなん」

「ひまが見せてくれたポストカードみたいだね」

「ほんとだね」

「でも変じゃねぇ?」

「都。筋トレ終わったの?変、って何が?」

綴が都を見上げながら訊いた。

都は身長が百八十センチとちょっとある。
中二にしてはズバ抜けて大きくて、学年でも一番大きい。

私と綴はほとんど同じで百五十センチ半ばだから、
至近距離の都と話す時はちょっと首が痛い。

「あの柵。しかもさ、よく見てみろよ。アレ、有刺鉄線だろ」

窓を閉め切ったまま眺める向日葵の園。
それよりも、もう少し手前に設置された木製の柵がうっすらと見える。

まるで狼から羊を守る柵みたいなやつ。