向日葵の園

「荷物はこれで全部ー?」

別荘は塀で囲われていて、中央には鉄扉。

数メートル先にお目当ての別荘が(そび)え立っている。

鉄扉の前に積まれた荷物。
お姉ちゃんが車の中をチェックしている憂さんに聞こえるように叫んだ。

「うん、それで全部だよ!」

別荘の施錠は忘れちゃうのに車にはしっかりとロックをかけて、
憂さんも鉄扉の前に来た。

鉄扉は既に半開き。
なるほど。
簡単に不法侵入を許してしまうだけのことはある。

憂さんの顔を見上げたら、気まずそうに苦笑いしている。

荷物が多いからスムーズに行き来できるように、
憂さんが右、都が左側に立って、二人で鉄扉を綱引きみたいにして全開にしてくれた。

ギギッ…て錆びた音を立てながら
全開になる鉄扉。

「よし。じゃあ荷物、運び入れようか」

「そうね。あんた達、しっかり働くのよ?」

「はーいっ!」

三人揃って手を挙げた私達を、
お姉ちゃんが笑う。

「じゃ、ひま、都。めーいっぱい楽しもうね!」

「うんっ!」

五人並んで、一歩、敷地内へと足を踏み入れる。

元・都市伝説の別荘を舞台にした、旅行始まりの一歩。

それはまるで全員で足並みを揃えてゴールテープを切るような、
終わりの一歩だった。