向日葵の園

「行くっつったて、いつ?俺、八月二週目くらいからはほんとに休みないからな」

「だから、その前に。部活も全中前に三日間くらい休みになるんでしょ?」

「あぁ。八月一日から三日までな」

「その時に出掛けようよ。決起集会ってやつ?」

「休みになるからって練習はしたいんですけど」

「何事もやり過ぎは良くないって言うじゃない!筋肉だってたまに休ませてあげなきゃ。休むことも大切でしょ?」

「うん。そーだよ、都。機械だってずーっと使ってたら故障しちゃうのも早そうだし…リフレッシュは大事だよって…別荘跡地に行くのはちょっと気が引けるけど」

「えー、行こうよぉー。夏休みくらい、いつもと違うことしたいじゃんかぁ」

「でも三日間って…泊まりでってこと?そんなの子どもだけで絶対に親が許してくれないよ」

「じゃあ誰か、ついてきてくれる親、居る?」

私達三人の両親とも、全員共働きなことを知っている。
子どもと違って親には夏休みなんて無い。
きっとどこの親もついてくることは不可能だ。

「んー…ちょっとお姉ちゃんに相談してみる」

「あっ!いいじゃん、日和(ひより)さんなら分かってくれそう!」

私には十九歳のお姉ちゃんが居る。
大学一回生で、科学的なことを学んでいる、っていうことしか知らない。

薬品がどうとか、実験がどうとか。
おうちでもよく話しているけれど、
文系の私にはちんぷんかんぷんだ。

「お姉ちゃんも忙しいんだからあんまり期待しないでよ」

「はぁーい」

分かっているのかいないのか、
綴はもうすっかりその気になって、
おいしそうに卵焼きを頬張った。