王都のカフェのテラス席で待っていると、呼び出した男が真向かいの席に腰を下ろす。
「お待たせいたしました」
今日のアルヴィは近衛隊の制服ではなく、私服だ。貴族らしく紺地のフロックコートを纏っているので、前回と印象が違う。美しい結び目のクラヴァットには、緑の宝石をあしらったクラヴァットピンが光っていた。
彼はお水を出しに来た店員に注文を済ませ、優雅な仕草で首を傾げた。
「今日はお返事をいただけるのでしょうか」
大人の余裕が窺える笑みに、ミーアはわずかに眉根を寄せた。
「――その前にハッキリさせなければいけないことがあります。あなたは女の私がお好きなのですか? それとも男装の……」
「ちょっ、ちょっと待ってください。……何やら誤解があるようです」
「では、やはり婚約の申し込みは兄のほうでしたか」
「…………どうしてそうなるんです?」
アルヴィは頭が痛いというように額に指先をあてた。
両者の間に沈黙が訪れる。通りを横切る車輪の音、楽しそうに笑う声、小鳥が羽ばたく音。それらに耳を傾けていると、店員が珈琲を持ってきた。
その姿を見送り、何やら考えこんでいるアルヴィを見つめる。思い詰めたような表情でさっきから微動だにしないが、そろそろ切り込んでもいいだろうか。
ミーアはミルクティーを一口飲み、ティーカップをソーサーに置いてから口火を切った。
「あなたと会ったのは兄の姿をしたときだけです。ということは、つまり。男の姿が好ましい、ということでしょう?」
「ち、違います!」
「お待たせいたしました」
今日のアルヴィは近衛隊の制服ではなく、私服だ。貴族らしく紺地のフロックコートを纏っているので、前回と印象が違う。美しい結び目のクラヴァットには、緑の宝石をあしらったクラヴァットピンが光っていた。
彼はお水を出しに来た店員に注文を済ませ、優雅な仕草で首を傾げた。
「今日はお返事をいただけるのでしょうか」
大人の余裕が窺える笑みに、ミーアはわずかに眉根を寄せた。
「――その前にハッキリさせなければいけないことがあります。あなたは女の私がお好きなのですか? それとも男装の……」
「ちょっ、ちょっと待ってください。……何やら誤解があるようです」
「では、やはり婚約の申し込みは兄のほうでしたか」
「…………どうしてそうなるんです?」
アルヴィは頭が痛いというように額に指先をあてた。
両者の間に沈黙が訪れる。通りを横切る車輪の音、楽しそうに笑う声、小鳥が羽ばたく音。それらに耳を傾けていると、店員が珈琲を持ってきた。
その姿を見送り、何やら考えこんでいるアルヴィを見つめる。思い詰めたような表情でさっきから微動だにしないが、そろそろ切り込んでもいいだろうか。
ミーアはミルクティーを一口飲み、ティーカップをソーサーに置いてから口火を切った。
「あなたと会ったのは兄の姿をしたときだけです。ということは、つまり。男の姿が好ましい、ということでしょう?」
「ち、違います!」



