川が見える土手沿いで、颯太が落ちていたバスケットボールを力強く地面についていた。
まるで、久しぶりに触れたその感触を噛み締めるかのように。
「陽菜乃は覚えてねぇかもしれないけどさ、中一の夏に俺たちは初めて話したんだよ。その時陽菜乃はバスケ部の三年生に恋してて、体育館までわざわざ練習見にきてたな。でも夏休みがもうすぐって頃に、先輩が幼なじみだった他校の後輩と付き合い出して、それを知った陽菜乃はぱったり来なくなった。最初は毎日よく来るけど暇なのかって呆れてたんだけど、いざ陽菜乃が来なくなった途端そのことがずっと気になってて。ある日、掃除当番だったから遅れて練習に参加することになって急いで廊下を走ってたら、靴箱の前で泣いてる陽菜乃を見つけたんだよ。その視線の先には、校門の前で待ってた彼女に優しく笑いかけてた先輩がいた。まだ忘れられてないんだなってその時初めて知ったよ」
颯太の手から滑って離れたボールが静かに足元に転がってきた。
「俺は気づいたら、陽菜乃に話しかけてた。“そんなに誰かを好きになれるってすげぇことだと思う。俺なんてバスケに恋してるから、現実の女子なんて目にすら入んねぇんだよな”って。陽菜乃は瞳いっぱいに涙を溜めて、ぽかんとしてたな」
颯太は私の前まで来ると、そっとボールを拾い上げて優しく笑っていた。
「それから“ありがとう”って言って笑った。初めて誰かの笑顔を見て、眩しいって感じた。いや、陽菜乃に対してはずっと眩しいって思ってたな。先輩を大好きって気持ちが見ててすげぇわかったから、恋に毎日全力な陽菜乃がずっと眩しかった。俺は恋する陽菜乃に惹かれて、向けられた笑顔で落ちたんだよ。…なんてそんなこと、陽菜乃はもう忘れてるよな。忘れていいよ。俺の気持ちなんて、全部忘れちゃえばいい。陽菜乃の近くで毎日過ごすようになって、相変わらず惚れっぽいけどどの恋にも全力で俺は誰かに恋をしている陽菜乃がずっと好きだったんだよ。だから近くでそんな陽菜乃を見られればそれでよかったのに。いつの間にかその視線を、想いを、俺に向けてほしいと思うようになった」
成長して大きくなった颯太の手に収まるボールは、少し窮屈そうだった。
あの頃から見た目は変わったのに、中身は全く変わってない。颯太も、私も。ずっとあの頃のまま。
まるで、久しぶりに触れたその感触を噛み締めるかのように。
「陽菜乃は覚えてねぇかもしれないけどさ、中一の夏に俺たちは初めて話したんだよ。その時陽菜乃はバスケ部の三年生に恋してて、体育館までわざわざ練習見にきてたな。でも夏休みがもうすぐって頃に、先輩が幼なじみだった他校の後輩と付き合い出して、それを知った陽菜乃はぱったり来なくなった。最初は毎日よく来るけど暇なのかって呆れてたんだけど、いざ陽菜乃が来なくなった途端そのことがずっと気になってて。ある日、掃除当番だったから遅れて練習に参加することになって急いで廊下を走ってたら、靴箱の前で泣いてる陽菜乃を見つけたんだよ。その視線の先には、校門の前で待ってた彼女に優しく笑いかけてた先輩がいた。まだ忘れられてないんだなってその時初めて知ったよ」
颯太の手から滑って離れたボールが静かに足元に転がってきた。
「俺は気づいたら、陽菜乃に話しかけてた。“そんなに誰かを好きになれるってすげぇことだと思う。俺なんてバスケに恋してるから、現実の女子なんて目にすら入んねぇんだよな”って。陽菜乃は瞳いっぱいに涙を溜めて、ぽかんとしてたな」
颯太は私の前まで来ると、そっとボールを拾い上げて優しく笑っていた。
「それから“ありがとう”って言って笑った。初めて誰かの笑顔を見て、眩しいって感じた。いや、陽菜乃に対してはずっと眩しいって思ってたな。先輩を大好きって気持ちが見ててすげぇわかったから、恋に毎日全力な陽菜乃がずっと眩しかった。俺は恋する陽菜乃に惹かれて、向けられた笑顔で落ちたんだよ。…なんてそんなこと、陽菜乃はもう忘れてるよな。忘れていいよ。俺の気持ちなんて、全部忘れちゃえばいい。陽菜乃の近くで毎日過ごすようになって、相変わらず惚れっぽいけどどの恋にも全力で俺は誰かに恋をしている陽菜乃がずっと好きだったんだよ。だから近くでそんな陽菜乃を見られればそれでよかったのに。いつの間にかその視線を、想いを、俺に向けてほしいと思うようになった」
成長して大きくなった颯太の手に収まるボールは、少し窮屈そうだった。
あの頃から見た目は変わったのに、中身は全く変わってない。颯太も、私も。ずっとあの頃のまま。

