100日後、キミのいない世界で生きていく

「そんなの…どうやってやるのぉ…?」


中から出てきたのは、髪がだいぶ伸びて少しやつれているけど、あの頃と変わりなくまんまるの目をした若菜だった。

若菜は久しぶりに声を発したのか、出てきた声はかなり掠れていた。


「わからない。本当に戻れるかはわからないけど、莉久が十年前に話してた、強い思いと引き換えに過去に戻れる電車。あれを探そうと思う。私たちはあの頃でずっと止まったままだから」

「そんなの…あるわけないじゃん。…でももしも、もしもだよ?本当に戻れたら、その時は若菜のことを殺していいよ。若菜は陽菜乃にひどいことたくさんしたから…。友達だったのに、陽菜乃のこと傷つけたぁ…っ」

「若菜…。そんなのもうとっくに時効だよ。もう、あの頃のことは怒ってないよ。若菜にも、若菜の気持ちがあっただけなんだから」


静かに泣いている若菜をそっと抱きしめる。

随分と痩せてしまったその体は、たくさんの後悔が詰まっている。そんな気がした。





「あ、陽菜乃ちゃん、だっけ?」

「…え?」


ギスギスとした雰囲気に耐えられなくなり、帰りは用事があるからと言ってみんなとわかれ逃げるように中庭に来ると、掃除当番なのか箒を持った昨日の女の先輩がヒラヒラと手を振ってきた。


「やっほ。あ、あたし、莉久の元カノの(たまき)でーす。たまちゃんとでも呼んで」