莉久が今どんな顔をしているのかわからなかったけど、声が震えていた。
それでも莉久は私に話そうとしてくれている。
いつもヘラヘラして適当な莉久が、初めて見せてくれた弱い部分だった。
「どこにいるかもわからなくて、子どもだった俺はとりあえず電車に乗れば会えると思った。母さんに会いたいしか考えてなかったから」
「…それで、過去に戻れる電車に乗れたの?」
「…陽菜乃は信じてくれてたんだな。ああ、そうだよ。当時は過去に戻れる電車の都市伝説なんて知らなかったけど、俺の強い思いと引き換えに本当に母さんがまだいた過去に戻ることができた。初めは何がなんだかわからなくて、自分が過去に戻ってきているのかすらもわかんなかったけど、記憶の中の母さんとの思い出をもう一度辿ることで過去に戻ってきたんだって実感したよ。結局、100日後には元の世界に戻ってきて母さんが出ていった未来も何も変わんなかったけど、それでもあの頃には気づけなかったことも知ることができた」
「気づけなかったこと?」
「母さんは俺に興味なんてまるっきりないと思ってたけど、作るご飯はいつも俺が好きなものばっかりだったり俺が書いた絵を部屋に大切に飾ってくれてたり、そういう些細な愛情に気づいちゃったんだ。だからって浮気して子どもを置いていった母親のことを許せるわけじゃないけど、過去に行ってから余計寂しくなった。俺を好きでいてくれる誰かといないと、自分の存在価値がわからなくなるんだ。それに、遊びの恋愛の方がいつ捨てられるのかってずっと怯えてる俺にとっては、楽なんだよ」
浮気ばかりして女の子を取っ替え引っ替えしていたクズ男の正体は、大切な母親からの愛情に気づけなかった自分に自信を持てない弱虫。
「莉久はちゃんとお母さんから愛されてたと思うよ。だって時を超えて逢いに行ったんだから、莉久がお母さんのこと大好きなことには変わりないでしょ?相手に愛されたいならまず自分が愛しなさい、ってよく言うじゃん。莉久はお母さんのことを大切に想っていたからこそ、お母さんだって莉久のこと愛してたはずだよ」
「…なんだそれ」
それでも莉久は私に話そうとしてくれている。
いつもヘラヘラして適当な莉久が、初めて見せてくれた弱い部分だった。
「どこにいるかもわからなくて、子どもだった俺はとりあえず電車に乗れば会えると思った。母さんに会いたいしか考えてなかったから」
「…それで、過去に戻れる電車に乗れたの?」
「…陽菜乃は信じてくれてたんだな。ああ、そうだよ。当時は過去に戻れる電車の都市伝説なんて知らなかったけど、俺の強い思いと引き換えに本当に母さんがまだいた過去に戻ることができた。初めは何がなんだかわからなくて、自分が過去に戻ってきているのかすらもわかんなかったけど、記憶の中の母さんとの思い出をもう一度辿ることで過去に戻ってきたんだって実感したよ。結局、100日後には元の世界に戻ってきて母さんが出ていった未来も何も変わんなかったけど、それでもあの頃には気づけなかったことも知ることができた」
「気づけなかったこと?」
「母さんは俺に興味なんてまるっきりないと思ってたけど、作るご飯はいつも俺が好きなものばっかりだったり俺が書いた絵を部屋に大切に飾ってくれてたり、そういう些細な愛情に気づいちゃったんだ。だからって浮気して子どもを置いていった母親のことを許せるわけじゃないけど、過去に行ってから余計寂しくなった。俺を好きでいてくれる誰かといないと、自分の存在価値がわからなくなるんだ。それに、遊びの恋愛の方がいつ捨てられるのかってずっと怯えてる俺にとっては、楽なんだよ」
浮気ばかりして女の子を取っ替え引っ替えしていたクズ男の正体は、大切な母親からの愛情に気づけなかった自分に自信を持てない弱虫。
「莉久はちゃんとお母さんから愛されてたと思うよ。だって時を超えて逢いに行ったんだから、莉久がお母さんのこと大好きなことには変わりないでしょ?相手に愛されたいならまず自分が愛しなさい、ってよく言うじゃん。莉久はお母さんのことを大切に想っていたからこそ、お母さんだって莉久のこと愛してたはずだよ」
「…なんだそれ」

