ライガンの背中を見送った後、
ドレシア公は深いため息をついた。

ドレシア公は高齢を理由に、
数年前から政務を少しずつ
跡継ぎである息子に代行させていた。
ライガンが過激になり始めたのはそれからである。
確かにアルドヴァール大公国は
自分にとっても煩わしい存在だった。
何かにつけてまるで親のように干渉してきて、
煩わしさを感じていた。

他の連邦諸国も
(歴史的経緯からして当然のことなのだが)
アルドヴァールとやたら親しく、
ドレシアはいつも爪弾きにされている気分だった。
だからもっと自分たちを見てほしい、
そのためにももっと力をつけなければと
息子に洗脳のように話して聞かせていたら、
気がつけば息子は、
その思いをフィオルガルデ連邦征服にまで
昇華させていた。

幼い頃は素直で純粋だと思っていた性格は
大人になるにつれて
思慮が浅く、思い込みが激しいものに
変貌してしまった。
ドラゴニア帝国皇太子と関わるようになってからは
狂気すら帯びるようになっていた。
少なからずその責任の一端は自分にもあり、
そして何よりドレシア公は息子を愛していたので、
息子と運命を共にすることを決意したのであった。