離婚してから始まる恋~念願かなって離婚したら、元夫が私を追いかけて辺境までやってきました~

その夜、
エレオノールは大公宮殿のバルコニーで一人佇んでいた。
この数日の目まぐるしい情勢の変化の
発端となった出来事に
自分が大きく関与してしまったことに
少なからず申し訳ない気持ちがあった。

(私がお父様の忠告を無視して、
ライガンを迂闊に信用したからこんなことに。
ドレシア公国も、ライガンも
もう元には戻れないでしょう。
ライガン、あなたは本当にそれでいいの?)
恋心とは難しいもので、
こんな事態になっても
エレオノールは完全にライガンを
見限ることはできなかった。
どうすれば昔の優しかった彼に戻ってくれるのかと
考えてしまう自分がいる。
モヤモヤした気持ちを抱えて、
何度目か分からない深いため息をついた。

「あの男のことを考えているのか?」
エレオノールの1人の空間に
突如入って来たのはエドリックだ。
「あの男は私欲のために君を敵に差し出したんだ。昔はどうか知らないが、今は君の敵だ。情けをかける相手じゃない。」
淡々と自分を諭してくるエドリックに、
エレオノールは思わずムキになってしまう。
「いちいち言われなくても分かってるわ、そんなこと。でも人の気持ちってそんなに単純じゃないのよ。誰もがあなたみたいに割り切って判断できるわけじゃ…」
「羨ましいよ。」
「え?」
「君を裏切っておきながら、今でもその身を案じてもらえる彼がね。」
愁いを帯びた瞳で
エレオノールをしばらくじっと見つめると、
エドリックはふっと視線を逸らし、
そのまま室内へと入って行った。
エレオノールはその背中から
目を話すことができなかった。