離婚してから始まる恋~念願かなって離婚したら、元夫が私を追いかけて辺境までやってきました~

ヘルモースはあっという間に戻ってきた。
背後には背が高く、金髪の美しい女性を連れている。
彼女が誓約の女神ステュクスなのだろう。
その腕には水の入った銀製の水盆が抱えられている。

「さて、神のもとで誓約を結ぼうという大胆不敵な人間はお前か?」
ステュクスがエドリックを挑むような眼差しで見つめる。
「いかにも。」
ヘルモースがエドリックに代わって答える。
「では早速始めよう。ヴァリニアの王よ、この盆に入った水にお前の左手を浸せ。」
ステュクスの言うとおりに、エドリックは自らの左手を盆に入れる。
「誓約を交わす前にお聞きしたいのですが、もし誓いを破ることになってしまったら私はどうなるのでしょう。」
「誓いが破られたその瞬間に、聖なる炎がお前の心臓を焼き尽くす。」
「どうした、ヴァリニアの王。怖気づいたか?」
「いいえ、ヘルモース様。喜んで、誓いましょう。」
エドリックは姿勢を正すと、ステュクスを真っすぐと見つめた。

女神の元での誓約はエドリックが思っていたよりも随分あっさりと終わった。
しかしながら、
これをもってヴァリニア王国はフィオルガルデ連邦の同盟国となり、
ドラゴニア帝国の侵攻を防ぐためにともに戦う同志となった。
「今誓約したことはどんなことがあっても、私でさえももう取り消すことはできない。ゆめゆめ忘れることのないよう。」
エドリックにそう念押しして、
ステュクスは颯爽と帰って行った。