離婚してから始まる恋~念願かなって離婚したら、元夫が私を追いかけて辺境までやってきました~

「これはこれは、待っていたよ。
アルドヴァール大公女殿下。」
マルヴァリス皇太子は
笑顔でエレオノールを迎える。
エレオノールもカーテシーで
それに応える。
それは、
温かな歓迎とはかけ離れたものだった。
マルヴァリス皇太子は
終始笑みを絶やさないが、
そのくせ目は全く笑っていない。
この人の前でリラックスできる人など
果たして存在するのだろうかというほど、
凍てついた笑みだ。

「ライガン、ご苦労だった。」
「はっ。」
ライガンは短い返事をすると、
マルヴァリス皇太子に頭を下げる。
まるで主従関係が存在するかのようだ。
「何をしている。お前にもう用はない。下がれ。」
マルヴァリス皇太子の冷たい物言いに
ライガンは一切反論することなく
そそくさと退室した。
残されたエレオノールは
たった1人でマルヴァリスと対峙する。

「あなたも災難ですね。ヴァリニア王妃のままでいれば、安全な城でぬくぬく過ごせたものを。こんな田舎にねぇ。」
フィオルガルデ連邦を小馬鹿にした発言に
エレオノールの表情は曇る。
「殿下こそ、この様な辺境の地までお出でになるとは、何用でございましょう。」
「未開の地に文明をもたらしてやるのも帝国の務めなんだよ。あなたの国もぜひ親交を深めようではないか。」