離婚してから始まる恋~念願かなって離婚したら、元夫が私を追いかけて辺境までやってきました~

気休め程度に髪を整え、
深く深呼吸をして馬車を出ると、
目の前には巨大な船が横付けされていた。
旗に描かれている紋章を見れば、
どこの国の船なのかは一目瞭然だ。
ドラゴニア帝国である。

船体は黒塗りで統一され、
エレオノールの中にある不信感を増長させていく。
(この船に乗ったら、もう後には引き返せない)
そんな直感がエレオノールの足を竦ませる。
行くべきではない。
「ねぇ、ライガン。せっかくのご招待嬉しいんだけど、やっぱり遠慮しようか・・・」
「そんなこと認められるわけないだろうっ!」
ライガンが声を荒げる。
今までの優しい眼差しや言葉はどこへやら、
エレオノールの腕を荒っぽく掴むと
有無を言わせず半ば引きずるように
マルヴァリス皇太子の待つ船内へと入って行った。

案内されるがままに、
エレオノールとライガンは
船の中を進んで行く。
ライガンからはピリピリとした空気が発せられ、
とても話しかけられる雰囲気ではない。
重い沈黙だ。
この沈黙を破ったのは
エレオノールでも、
ライガンでもない。
他ならぬマルヴァリス皇太子だった。