離婚してから始まる恋~念願かなって離婚したら、元夫が私を追いかけて辺境までやってきました~

【エレオノール視点】

エレオノール奪還に向けて
アルドヴァール大公宮殿がてんやわんやしている頃、
エレオノールとライガンを乗せた辻馬車は
人知れず国境を越え、
港町を疾走していた。

「ライガン、私たちは一体どこに向かっているの?私はてっきりドレシア公の城に行くものだと思っていたのに。」
エレオノールの目の前には、
朝靄に包まれたアヴァロン海が広がっている。
「マルヴァリス皇太子殿下に紹介すると言ったでしょ?殿下の居られるところに行くのさ。」
「直接行くなんて聞いてないっ!あなたに突然連れさ出されたものだから、身なりだってまるでなってないし…」
「まぁ確かにその服で皇太子殿下には会えないね。でも大丈夫。ちゃんと着替えを持ってきてるから。」
ライガンはこともなげにそう言うと
ドレスが入っているであろう包みを
エレオノールにサッと手渡した。
用意周到である。
そしてこれまたタイミング良く、
馬車が停止した。

「タイミング良く、到着したみたいだね。僕は先に降りてるから中で着替えると良い。」
ライガンが扉を閉めた後、
エレオノールは渡された包みを開いた。
そこには深緑色のロングスリーブドレスで
金糸でアザミの刺繍が施されていた。
アザミはドレシア公家の花なので
この服を着ることに多少の戸惑いがあったが
部屋着のままでいるわけにもいかず、
渋々袖を通した。